毎日オフィスに出社する働き方にはもう戻らない ナーブに定着したリモートワークの実態とは

Vol.4 ナーブ株式会社

東京都港区赤坂6-1-20

国際新赤坂ビル西館B1F

 

「もしも」が見えれば人の暮らしはもっと豊かに、をVISIONに掲げ、最新のVR技術で不動産業界や旅行・ブライダル業界に先進的な内見・商談ツールを提供するナーブ株式会社。住みたい家や行きたい旅行先を、店舗のカウンターで、さらに商業施設や自宅などでもバーチャル体験できる各種サービスを展開されています。

コロナ禍において、2020年3月〜2020年6月には『おうちでVR内見』サービスの無償提供、2020年7月~は新サービスである『パノラマオンライン商談ツールを提供するなど不動産業界向けにいち早く新しい働き方を提案するとともに、自社の社員の安全性確保と生産性向上を目指して原則リモートワーク体制への移行を決断されました。そして、本社機能とラボを統合の上、2020年8月8日より赤坂にオフィスを移転。めまぐるしく変化した働き方や今後の展望について代表取締役CEOの多田英起様にお話を伺いました。

ナーブ株式会社 代表取締役 CEO 多田英起様

原則、全員リモートワーク体制へ移行

――ご移転前のオフィスについてお聞かせいただけますか?
千代田区大手町アドレスに、専有部だけで約100坪、最大70名くらい収容できるオフィスを借りていました。拡大路線時は全体が見える方がコミュニケーションがとれてよいかなと思い、複数のフロアや拠点に分かれないよう「1フロア」にこだわっていました。

――いつ完全リモートワークへの移行をご決断されましたか?
新型コロナウイルス感染拡大の中、東京都の緊急事態宣言がでるとほぼ同時くらいに決断しました。持ち出しリストを作成して、会社から椅子やディスプレイを自宅に配送して使用してよいことを社員に伝えましたが、当初はまだリモートワーク環境を整える重要性を理解していない社員が多かったですね。コロナがすぐには収束せず、この状況が長引くことが分かりだすと、はじめはノートパソコンで大丈夫と思っていた社員もディスプレイが必要だとか、腰が痛すぎるので椅子が必要だとか、リモートワークするにあたって環境面での要望がでてきました。

広報担当の保壽さんは、業務でレンタカーをつかったついでに自宅と数名の社員宅へリモートで必要な備品を会社から運んだそう。

 

――リモートワークに移行して率直なご感想はいかがでしょうか?
はじめは生産性が落ちるだろうと反対するメンバーもいました。しかし、数ヵ月経過した現在、むしろリモートワークの方が弊社では生産性が高まっており、うまく移行が進んだため、オフィスに毎日出社する働き方には戻す予定はないと思います。最先端の技術を提供する会社としてお客様にバーチャルを提供しておきながら、売る側の私たちはほとんどリモートしたことがないという状況では矛盾があったので、リモートワーク移行によって私たちの提供するサービスと私たちの働き方が一致するレベルになったのは大きな変化です。

――管理部門や開発部門の方もリモートワークでしょうか?

総務・管理系のメンバーが本社に出社することがあったとしても、多くて週2回以下くらいです。開発のメンバーはコロナ以前からリモートワークをしています。結婚して小さいお子さんがいるので1ヵ月に数回の出社以外はすべてリモートにしている男性社員もいますし、熊本県在住で入社して一度もナーブに出社したことがないメンバーもいます。

――原則、全員リモートワークになってからは社員同士はどのようにコミュニケーションをとられていますか?

TeamsやGoogle Meetも使いますが、ベースはZOOMですね。あとSlack(ビジネスチャットツール)に投稿される量が増えたことで、コミュニケーションギャップは減りました。以前は口頭で伝えてエビデンスがのこらなかったものが、全て文字で残るようになったので、あとから見ても状況がわかるようになりました。

――リモートワークに移行してよかったことは他にありますか?

営業支援・顧客管理のためにもともとsalesforceを導入していましたが、今までは商談後に次の場所へ移動があると、入力する時間がないなどと言い訳をして入力しないメンバーもいました。いまはリモートワークで移動時間がなくなったので、入力しない理由がなくなりましたので、リモートで商談して、直後にsalesforceに入力することで、成果が分かり、行動や話の内容も分かり、売上もあがるようになってきました。コロナで一時的に営業の生産性が落ちたのですが、いまは過去一番といっていいほど売上が回復してきています。

また、リモートにした今が一番、部門間の壁がなくコミュニケーションがうまくいっている気がします。以前はデスクを同じ島に並べていても、部門ごとに軋轢というかコミュニケーションの不一致がよくあったんです。リモートワークになってからは、部門を超えて決まった定例が設定されるようになり、そこでコミュニケーションが取れるようになりました。Slackでは投稿されたテーマについてみんながスレッドで返信していくので、「これどうなっているの?」と進捗を聞いたときに「私は聞いていません」というケースが減りました。状況を把握していないメンバーがいると、時間をかけて状況を知ってもらうところからはじめないといけませんでしたが、それが減ったことで業務がスムーズに進むようになり、部門間連携がとてもよくなりました。

移転してオフィスの賃料が5分の1以下になりましたので社員にインセンティブを出して還元できるようにもなりました。

――リモートワークで課題に感じていることはありますか?

しいていえばオフィスだとちょっと横にいる人に聞けていたことが、文字を打ち込んできかないといけなかったり、ミーティングの場で聞かないといけなかったりという一手間はありますが、そこまで苦にはなっていません。「どこでもストア」のような大きな機械やハードウェアを扱う事案はオフィスだと現物を見ながら仕様をすぐに確認できるメリットがありますが、自宅だとそれができないので、仕様を電子化してどんな場所からでも確認できるようにするなど課題はありますね。
あとは運動不足ですね(笑)。体重キープは通勤が担ってくれていたようです。

オフィスにずらりと並ぶ自社製品や開発中のハードウェア

コンビニで住宅をVR内見できる日も近づいている

進む電子化とペーパーレス化

――捺印のための出社は減りましたか?

色々な企業に調整していただいて印鑑はほぼ廃絶しました。電子契約でOKの企業も増えてきましたね。昔は担当者が請求書を確認する業務があったのですが、今はPDF化した請求書をチェックして完了というフローになり、請求書の原本処理がなくなりました。今年4月はまだ月末に契約書確認や印鑑捺印のために出社する事がありましたが。2~3ヵ月かけてようやくほとんど捺印目的の出社はなくなりました。

――お付き合いのある不動産業界も電子化・ペーパーレス化は進んでいますか?

不動産業界は数年前まで申込方法1位はまだFAXというくらいアナログな業界で、紙ベースで申込書や契約書をファイリングして管理している状況がありました。しかし、コロナウイルス感染拡大以降、反対する関係者がいなくなり電子化が急速に進みましたね。社内の業務においても、出社できない状況が続いたことで、今までは多少面倒でも我慢していてそのまま対応していたことや、「忙しい」を合言葉にそのままになっていた課題があらいだされ、出社しないためにはどうすればよいか部門をこえてみんなが考え、同じ方向を向けたのではないかと思います。

変わるオフィス観

――オフィスに対する考えはどのように変わりましたか?

移転前のオフィスがナーブ躍進の時代をつくってくれたというのは間違いなくて、VRという新しい技術が好立地でビジネスを継続できるくらいのステージになったんだよという旗印になりました。

以前は、オフィスは好立地で1フロアで福利厚生が充実しているものが良いという幻想がありました。それでランニングマシーンやシャワースペースのあるジムが使えるようにした時期もありましたが、無償チケット分を消化することなく終わったり、皇居のみえる共用スペースがあってここで落ちつけそうでいいなとおもってもあまり実用的に利用されることがありませんでした。カフェカウンターあり、フリードリンクあり、シャワーブースあり、仮眠室ありと今まではオフィスや福利厚生を充実させてきましたが、コロナでオフィス戦略を真逆に転換することになりました。面白いと思っていろいろな施策を試してきたのですが、感想としては、これからオフィスは新しい定義に移るんだろうなと。

――出社する意味のあるオフィス、人が集まることで生まれる何かを今各社が模索されている傾向がありますがどう思われますか?

私は逆な気がします。リモートでできないことをオフラインでどう補うかだと思っていて、リモートで生産性があがっている場合は、どうやってオフィスにきてもらうかを考えるのは不毛だと思うんです。いままで働き方が改革されていく中でオフィスの選択肢や課題も色々でてきたように、これからリモートワークをする中で課題や足りないこともこれから色々でてくると思うんです。オフラインでオンラインをどうサポートするのかを検討すればいのかなと思います。

近々社員同士でBBQを行う予定をしているのですが、社員同士がコミュニケーションをとったり、人となりをしるためにオフラインでたまに集まることはとても重要だと思います。いまいるこの場所のように社員が集まって話せるスペースはあっていいなと感じています。また、これだけリモートワークが進むと、自宅では集中できないときにサテライトオフィスやコワーキングオフィスを利用する需要は、以前よりは増えてくるのかもしれません。

――働き方や福利厚生はますます大きく変わっていきそうですよね。

そうですね。フリードリンクや置き菓子サービスなどもオフィスに人がほとんど来ないのであれば置いても意味がないですし、いままでの福利厚生はオフィスにいること前提で考えられているので、考え直しですね。

アイディアレベルですが、タクシーの新しい利用方法として会議室タクシーとか面白いかもしれないですね。リモートオフィスも契約しているのですが、遠くてわざわざ行きにくいとか、重要なオンライン会議に集中して参加したいときに、会社が、車内で会議ができるタクシーを手配して家の前につけてくれるとかよくないですか?

これから考えているのはワーケーション支援です。会社が費用の半分くらいを負担して好きな場所で月~金はワーケーションしてもらい、土日はあそんでリフレッシュしてもらうとか、働く場所にとらわれないと色々選択肢が広がります。オフシーズンの観光地支援と絡めて行えば地方活性化にもなりますし。これからは、好立地でかっこいいオフィスより、数ヵ月に1回好きな場所で働けるとかの方がその会社の価値や魅力になるかもしれません。そういう面白いことや働き方ができる会社が好きな人が集まることで、同じ方向を向いて業務を進めていけるのではないかと思っています。これからも働き方にあわせた制度を社員の声をききながら作っていきたいと思います。

編集後記

「オンラインで課題となっているところをオフラインでどうサポートしていくかを検討していきたい」多田様のお言葉が印象的でした。業種や職種、社員の年齢層やITリテラシーレベルによって、リモートワークが定着するかどうかは大きく分かれ、コロナ禍で変化した働き方やオフィスに対する課題も各社で異なります。今後も多種多様な企業の働き方の「今」を取材し、オフィスの在り方や価値のヒントになるような情報をお届けしていきたいと思います。

インタビュー・編集:服部 撮影:平井