【ワークスタイル大辞典】第3回 今話題の働き方・休み方のメリットとデメリットに迫る!

この記事では、ワークスタイルを構成する要素のうち、制度などのソフト面について説明します。

近年広まりを見せている、さまざまな勤務時間や日数、休暇の制度の形。従来の制度との違いやメリット・デメリット、導入例を参考に、自社に取り入れるヒントを見つけてみてください。

連載企画【ワークスタイル大辞典】

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、ある期間に対してあらかじめ定められた総労働時間があり、その範囲内で毎日の始業・終業時刻や働く時間を、労働者自身が自由に決めることができる制度のこと。

例えば、1ヶ月に働く時間が160時間と決められていた場合、合計が160時間になれば、1日に10時間働く日や、逆に5時間で仕事を切り上げる日があっても問題ありません。

コアタイムとフレキシブルタイム

ただし、通常のフレックスタイム制では、24時間いつでも自由に出退勤できるわけではありません。

フレックスタイム制を導入する際、企業は「コアタイム」(必ず出勤していなければならない時間帯)を設けることができます。その前後の時間が、自由に出退勤できる「フレキシブルタイム」となります。

これは、労働者同士のコミュニケーションや情報共有を円滑にするためで、一日の中で必ず全員が揃う時間帯を設けることで、社内のミーティングや取引先との商談などを予定しやすくする意図があります。

なお、コアタイムは必ず設けなければならないものではありません。近年では、より自由な働き方ができるように、すべての労働時間をフレキシブルタイムとし、勤務時間から出勤する日までを完全に労働者の裁量に任せる「スーパーフレックス制度」を導入する企業も増えています。

フレックスタイム制のメリット

ワークライフバランスが取りやすくなる

日々の働き方を労働者本人の裁量で選択できることは、フレックス制の最大の特長であり、メリットです。

出退勤時間を自分の都合で調整することで、子育てや介護などをしている人でも働きやすくなります。このような労働者にとっては、賃金を得るという経済的充足・社会とのつながりを保つという精神的充足を得られ、企業にとっても労働力を確保することができます。

通勤ラッシュを負担に感じる人は、混雑する時間帯を避けて通勤することも可能です。また、仕事が少ない時期は早めに帰り、忙しい時期には集中的に取り組むなど、自分の働く時間を効率的に配分したメリハリのある働き方ができることで、仕事以外の趣味や勉強に励む機会を得やすくなります。

フレックスタイム制のデメリット

コミュニケーションの難しさ

フレックスタイム制では、それぞれの従業員の出勤時間がバラバラになることで、コミュニケーションが取りにくくなるおそれがあります。特に対面でのコミュニケーションを重視している業種・職種では、上記でご紹介したように、「コアタイム」を活用するといいでしょう。

また、ビジネスチャットツールを使ったオンラインコミュニケーションを上手く組み合わせて、同僚が同じ時間に同じ場所にいなくとも業務が円滑に進むように環境を整える必要があります。

時間管理の難しさ

自分で時間を管理することが苦手な人にとっては、働く時間を本人の裁量に委ねるフレックスタイム制は、ルーズな働き方を助長してしまうリスクもあります。

フレックス制を導入する場合は、朝礼や定例の機会を設けて業務の進捗を細かく確認したり、日ごろの面談の機会などでフレックス制が活用できているか話し合ったりすることも重要かもしれません。

フレックスタイム制を導入しやすい業界や職種

フレックスタイム制を導入しやすいのは、外部の人と接触する機会が少なく、自分のペースで業務を進めやすい業界や業種です。

業種の例

  • 通信、インターネット、マスコミ業界など

職種の例

  • エンジニア、プログラマー、デザイナー、ライター、編集職、企画職、事務職など

週休3日制

週休3日制とは

一般的に、多くの企業では、週休2日制または完全週休2日制を設けています。「週休3日制」は、週の休みを3日にする制度。たとえば、労働時間が週40時間の場合、一般的な8時間×5日間から10時間×4日に変更するイメージです。

労働基準法では、一日の労働時間の上限は原則8時間と定められています。そのため、週休3日制度を導入するにあたっては、労使協定または就業規則等において「変形労働時間制」を定める必要があります。

大企業を中心に導入が増えている新しい休日制度で、企業側の観点からは人材の確保や生産性の向上などの効果が期待できます。労働者側のメリットやデメリットはフレックスタイム制とほぼ同様で、ワークライフバランスが取りやすくなる一方で、コミュニケーションや時間管理には注意しなければなりません。

週休3日制の広がりの背景

週休3日制の広がりの背景には、政府の後押しもあります。

自民党の一億総活躍推進本部は、2021年4月20日に発表した提言(「選択的週休3日制」による社会発展の促進)で、週休3日制の目的を下記のように説明しました。

(1)子育て・介護や、治療と仕事の両立

(2)大学院進学やリカレント教育によるキャリア形成または副業・兼業やNPO・ボランティア活動による自己実現の時間確保

また、新型コロナウイルスの感染抑止に向けた取り組みとして、在宅勤務が難しい職種の従業員の出社率を抑える狙いで週休3日制を導入する企業も増えてきています。

導入企業の例

  • ファーストリテイリング(「ユニクロ」を運営)
    • 2015年10月から導入
    • 国内の転勤のない「地域正社員」約10,000人が対象
  • 東芝
    • 2020年5月に導入を発表
    • 工場など製造現場の従業員が対象
  • 塩野義製薬
    • 2022年4月から導入
    • 研究部門や工場勤務を含めた国内の従業員約4000人が対象

サバティカル休暇

サバティカル休暇とは

サバティカル休暇とは、企業が定める一定の期間を勤続した従業員に対して、数か月から一年程度の長期休暇を与える制度のこと。休暇の使い方や目的は自由であることが多く、従業員のリフレッシュやスキルアップなどに活用されています。

サバティカル休暇はこれまでは主にヨーロッパ諸国で活用されてきましたが、日本でも働き方改革の推進やワークライフバランスを重視する流れの中で、導入する企業が増えてきました。

サバティカル休暇のメリット

離職の防止

長期休暇の取得が確実にできることで、従業員のモチベーションの維持につながります。

また、育児休暇や介護休業とあわせてサバティカル休暇を活用することで、キャリアを中断することなく仕事に復帰しやすくなるというメリットもあります。

自己成長の機会の後押し

海外留学やボランティア活動など、普段と違う環境に身を置くことで、新しい技術やスキルを取得しやすくなります。また、休暇中に業務外の経験を積んだり、視野を広げたりする機会も得られます。

休暇取得後、従業員が休暇中に得た知識や経験を復職後の業務に活かすことで、利益を生みやすくなることは、企業側にとっても大きなメリットです。新たな価値観がもたらされ、他の従業員のモチベーションの向上にもつながるかもしれません。

心身のリフレッシュ

長期休暇が心身のリフレッシュとなり、従業員のメンタルヘルスや過労死などのリスクを下げる効果が期待できます。

サバティカル休暇のデメリット

業務が混乱する可能性

サバティカル休暇は、その企業において長くキャリアを築いた従業員が対象であるため、不在によって業務が停滞する可能性があります。また、情報共有不足や他の従業員の業務量増加によって業務に混乱が生じるおそれもあるため、休暇前に引継期間を設けるなどの調整が必要です。

復職のフォロー

休暇の期間によっては、人間関係や職場環境、業務内容の変化が予想されるため、復職した従業員に対するフォローアップが必要となります。

導入企業の例

  • Zホールディングス(旧・ヤフー)
    • 2013年に日本でいち早くサバティカル休暇を導入
    • 勤続10年以上の正規雇用の従業員が対象
    • 最短2か月・最長3か月
    • 休暇中は「休暇支援金」として基準給与の1か月分を支給(有給休暇との併用を推奨
  • リクルートテクノロジーズ
    • 「STEP休暇」という名称で、勤続3年以上の社員が対象
    • 3年ごとに最大連続28日
    • 休暇取得の応援を目的として、一律30万円を支給