地方都市で働きたくなる場所を 建設業界をITで変革するKENTEMの静岡オフィス

Vol.21 株式会社建設システム

静岡第2オフィス:静岡市葵区呉服町2-1-5 5風来館 8F

https://www.kentem.jp/

静岡県富士市に本社を構え、全国主要都市に拠点を展開する株式会社建設システム(通称:KENTEM)。静岡市内にある3つのオフィスのうち、静岡第2オフィスにて静岡最先端のオフィスを目指すプロジェクトを遂行。ITの力で建設業界の課題を解決していく同社のオフィス戦略や2021年6月に完成した静岡第2オフィスの全容について、代表取締役社長の重森様と建設ICT事業部課長の長谷川様にお話を伺いました。

代表取締役社長 重森渉様

静岡第2オフィスに勤務する建設ICT事業部 課長 長谷川陽介様

ITで建設業界の課題を解決

――建設業界に特化したシステム開発をされていますが、業界特有の課題にはどのようなものがありますか?

重森:日本では就労人口の減少が危惧されていますが、とりわけ建設業界の就労人口減は顕著です。50~60代の就労者が多く若年層がなかなか就労しないため、平均年齢も他業種より高くなってきています。そのような状況下で、耐用年数を過ぎた橋梁や上下水道をどのように入れ替えていくかは業界の大きな課題となっています。

――ITを活用して少人化やシステム化を進めることが急務ということですね。

重森:その通りです。例えば、ドローンで上空から撮影した画像を3Dの設計・施工データに落とし込んだり、建設現場の機械を遠隔で動かすなど、ITの活用は業界全体で進んできています。その中でも私たちは現場で人が行っている作業を楽にしたり、これまで2人で行っていた作業を1人で行えるようにするといった明確な訴求ができるシステム開発が得意です。

静岡第2オフィスのエントランスはロゴの「K」とリンクしたデザイン

――クライアントからはフルオーダーでのシステム開発のご依頼が多いのでしょうか?

重森:私たちはフルオーダーでの開発をお引き受けすることは少なく、開発したシステムをパッケージ化し、他の企業にもご利用いただけるようにすることが多いです。それは同じ課題を持つ多くの企業に貢献することができるためです。例えば、スーパーゼネコンから開発依頼があっても費用はいただかずに開発をさせていただき、その代わりに建設業界全体に販売させていただきたいというご提案をしています。本来、フルオーダーで開発を依頼すると数千万~数億円の費用がかかり、作ったシステムを外販するには煩雑な契約業務が必要になりますが、それが不要で、なおかつ要望を叶えたものを作ってくれるなら、とご了承いただけるクライアントが多いです。

進みつつある官民連携とDX化

――これまで数多くのシステム開発をされていますが、どのようにクライアントのニーズをキャッチし続けておられますか?

重森:10年ほど前は建設現場を回ってヒアリングを行いニーズをキャッチしていました。現在は国土交通省やスーパーゼネコンのシステム担当の方々と定期的に話す機会を設けることでご要望やアイディアをいただくことが多いです。日建連という建設業界のトップが集まる団体の打ち合わせにもお声がけいただき、国と民間それぞれで考えていることを擦り合わせたり、建設業界の今後のシステムの方向性について意見交換をしています。

――コロナ禍でマーケットやお客様のニーズに変化はありましたか?

重森:人との接触や長距離移動を避けるために、機械の遠隔操作や遠隔臨場システムのニーズが増えました。公共の建設現場の場合、これまでは発注者である国や都道府県・市区町村のご担当者が現場に行って進捗状況を目視で確認する必要がありましたが、現在ではタブレットデバイスのカメラ等を通じたオンライン検査が主流になり、この数年で大きく技術が進歩しました。また、各会社が保有しているデータをクラウドで一元管理・共有していこうと国が動き出しています。これが可能になれば、これまで現地で計測しないと判らなかった数値が他社のデータを組み合わせることで判明するようになります。建設業界のDX化は競合他社を含めた業界内での連携が不可欠であり、各社の情報開示レベルの調整は今後の課題と言えます。

――コロナ禍を経て社員の皆様は現在どのような働き方をされていますか?

重森:3分の2の社員はリモートワークをしています。社員は採用された拠点へ出社できる場所に居住し、基本的には出社もできるような体制をとっています。弊社の業務は様々なシステムが連動しており、個人が自宅で完結できる業務が少なく、業務を習得するのに時間がかかるためです。

長谷川:私の部署は測量機と接続して使うアプリ(快測ナビ)のサポートを行っています。そのため、実際に機械を操作したり確認しながらサポートすることもあり、出社することが多いです。また、安定した環境でサポートを行うには自宅よりオフィスの方が都合が良いです。

内部環境も重視するオフィス戦略へ

――全国に支店や営業所がありますが、オフィス選定の際に共通して重視されるポイントはありますか?

重森:主要な駅から徒歩10~15分以内で、若い社員が喜んで通えるオフィスを選ぶようにしています。築年数や外観、通信環境はもちろんのこと、面積の割にお手洗いの数が少ないビルもあるため水回りが快適に利用できるかチェックすることが多いです。これまでは最低限の基準をクリアしていれば良いと考えていましたが、最近は採用面を重視して選定することが増えてきました。立地やビルのグレードなどのハード面だけではなく、内装デザインなどのソフト面も重視するようになりました。

――静岡県には本社以外に静岡市に静岡第1~第3オフィスがありますが、それぞれどのような用途でどのような部署の方が働かれていますか?

重森:静岡第1オフィスと第3オフィスは開発チームが勤務し、第2オフィスは開発チーム以外の様々な部署のメンバー約20名が勤務しています。ここには新ソリューション推進・プロモーション推進・Web制作・教育・SDGs推進・カスタマーサポートなどを手掛けるチームがあります。

――2021年に静岡第2オフィスを開設されることになった経緯や目的について教えてください。

重森:一番の目的は採用強化です。本社は静岡県富士市にありますが、車がない方にとっては通勤や移動が不便なため、新卒を採用するにはハードルが高い拠点でした。静岡市内中心部にある第2オフィスの立地であれば県の中部広域から通えるため、資格を保有している方や大手で経験を積んだ方なども採用が可能になり、中途採用においても効果が大きいと考えました。

元ホールの展示スペースをオフィスに大改装

――静岡第2オフィスを選定される際の決め手は何でしたか?

重森:静岡は1フロアあたりの面積が小さいオフィスビルが多いのですが、その中でも当ビルは1フロアで130坪の面積を確保できたこと、最上階でもともと某銀行がレセプションホールとして利用していた区画だったため、2フロア相当の階高があり開放的だったことも魅力でした。改装すれば面白いオフィスができる、静岡で働きたい方々を採用できると確信しました。

自然光が降り注ぐオープンミーティングスペース

エントランスホールの応接スペースからはガラス越しに執務スぺースを見渡せる

――レイアウトやデザインへのこだわりについて教えてください。

長谷川:静岡で最先端のオフィスを作ろうと2021年3月にプロジェクトが動き出しました。「KENTEM Working Park」というコンセプトを社内で決定してから、5社の施工会社様にコンペを依頼しました。社員十数名で各社のプレゼンを拝見し社内投票を行った結果、コンセプトを最も体現したデザインでなおかつVRや3Dパースで働くイメージがつきやすかった会社に依頼することが決定しました。執務室はフリーアドレス席で、Parkを連想させる木や植栽が豊かな空間になっています。広い作業テーブルやソファー席、カウンター席、集中ブースなどその日の気分や業務内容によって自由に働く場所を選択することが可能です。

天井高を活かした木製フレームのデザインは公園の休憩所を連想させる

コールセンター業務を行うサポートチームは固定席で集中できる環境を確保

長谷川:リフレッシュスペースは、休憩だけではなくフレキシブルな用途に利用可能です。静岡第2オフィスは靴を脱いでスリッパで過ごすスタイルですが、このエリアはスリッパも脱いでリラックスできます。カフェスペースに隣接しており、自然と社内交流も生まれやすい設計になっています。コーポレートカラーである黄色を椅子や床などに効果的に使用しています。

直線が多いオフィスではバランスボールのフォルムが良いアクセントに

スリッパを脱いでリラックスできるリフレッシュスペース

シックなカラーリングで落ち着いた印象のミーティングルーム

ストックスペースのデザインもぬかりなく パーソナルロッカーの上で作業やMtgも可能

――静岡第2オフィスでお気に入りのスペースを教えてください。

長谷川:カフェスペースが一番気に入っていて、お昼休憩はここでとることがほとんどです。終業後に一息つくこともありますね。

一枚板のカウンターがあるカフェスペースは社員の憩いの場

重森:私は広いバルコニーからの眺めが好きですね。旧市役所や県庁舎を眺めることができます。

地方都市で若手が活躍できる場所を

――これからチャレンジしていきたいことや事業の展望について教えてください。

重森:これまで弊社の売上の約97%は公共の建設現場に関するシステム開発であり、発注者は国や都道府県・市区町村などが主体でした。民間のビルや住宅関連の建設システムの分野ではまだまだできることがたくさんあるため、これからさらに開発領域を広げていきたいと思います。迫り来るDX時代の中でリーダーシップをとっていくためにも、既存事業で手がいっぱいになっていては未来がありません。新しい領域にチャレンジしていくには人材の採用と育成が不可欠です。静岡第2オフィスに続いて第3オフィスを開設したばかりですが早々に手狭になりつつあるので、会社の成長に合わせて次のオフィス戦略を考えていく必要があります。コロナ禍で働き方が多様化し、首都圏から離れて働きたいという方も出てきています。これからの世代が働きたいと思える場所や企業を作ることで、優秀な人材が流出せず地方都市に残る、そして集まってくるようになれば良いと考えています。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

元ホールの展示スペースという特性を活かした、圧倒的な空間の広がりが感じられました。デザインの異なるカーペットでスぺースごとの色を楽しめたり、キャスター付の可動式家具でフレキシブルなレイアウトを可能にするなど、使うたびに新たな表情を見せてくれるオフィスです。見上げるほどの高さがあることで目線も気持ちも自然と上向きになりそうです。

撮影/株式会社建設システム 尾崎様
インタビュー・編集/オフィスナビ株式会社 服部