ここからギアをあげていく 未完成さと余白を残したwevnalのオフィス移転

Vol.20 株式会社wevnal

東京都渋谷区恵比寿1-23-23 恵比寿スクエア 7F

https://wevnal.co.jp/

2011年に創業し、12期目を迎えた株式会社wevnal。人とテクノロジーを掛け合わせることでユーザーのブランド体験を高めるBXプラットフォーム「BOTCHAN」を提供しています。資金調達を行い人員拡大フェーズの同社は、2022年5月にオフィス移転を実施。同社のオフィス移転プロジェクトの進め方やオフィス設計へのこだわりについて、代表取締役の磯山様にお話を伺いました。

代表取締役 磯山博文様

顧客に価値あるブランド体験を

――御社の主力事業について教えてください。

弊社は、ブランド体験(Brand Experience)の向上を通じて消費者や企業のLTV(※)の最大化を実現するBXプラットフォーム「BOTCHAN(ボッチャン)」の開発・運営をしています。顧客の些細な行動をキャッチしてデータを分析し、チャットフォームなどを通じて適切な体験を提供することでファン化を推進しています。例えば、1on1のチャットで興味関心を引き上げて商品理解を促進したり、ユーザーの嗜好に合わせたおすすめコンテンツを表示することも可能です。現在、BOTCHANは600社以上の企業にご利用いただいておりますが、毎月10~25件のペースでサービスをご利用いただくブランドが増加しています。導入いただいたブランドで売上が3倍になるなど、効果を実感していただき、他のブランドでの導入にも繋がるケースが多いです。

※LTV(ライフタイムバリュー):1回の取引で得られる利益だけではなく、顧客から生涯にわたって得られる利益のこと。

――BOTCHANの導入企業はどのようなジャンルの商品を販売されていますか?

基礎化粧品や健康食品など、単品かつリピート率の高い商品を取り扱われている企業が多いです。消費者の年齢・性別は様々です。

――業界での「BOTCHAN」の強みについて教えてください。

まず特徴的な点は、お客様のECサイト上に単品リピート通販向けの決済チャットフォームを生成できる点です。ECサイト上のこれまでのフォームでは商品をカートにいれても、個人情報入力の煩わしさが原因で購入せず離脱する「カゴ落ち」が多々ありました。ここで一般的なメッセージアプリと同様にチャットでユーザー様と一問一答形式でコミュニケーションをとることで、ユーザーのストレス軽減と一貫したブランド体験ができるため、カゴ落ちの改善に繋がります。また、これまで蓄積したノウハウを活かして、D2CブランドやECサイトの世界観を崩さずに購入までサポートしていく接客デザインのシナリオ作成力も強みで、一気通貫でサポートしているサービスは日本ではほとんど存在しないのではないでしょうか。

働きやすいスペースの余白を求めて

――今回のオフィス移転の経緯について教えてください。

弊社はBOTCHAN事業のさらなる成長のために資金調達を行いました。本事業は既存のお客様のサポートを行うカスタマーサクセスチームが重要な役割を果たすため、調達した資金は採用や人件費に活用し、この半年で30名程社員が増加しオフィスが手狭になりました。2022年6月現在、社員数は110名になり、カスタマーサクセスとエンジニアが全体の半数を占めています。またコロナ禍でエンジニアやセールスの働き方も大きく変化し、密度の高い空間では集中業務やオンライン商談がしづらくなってきたため、社員の働きやすい環境を作ることも必要だと感じていました。

――今回のご移転で改善したかった課題は何ですか?

前オフィスは渋谷駅から徒歩3分の宮益坂エリアにあり、居抜きで入居して5年間過ごしました。好立地でしたが、ビルそのものや空調設備に古さがあったことや、オフィスの真ん中に太い柱があり全体を見渡せる開放感がないことは課題でした。スペースの余白が少なく雑談やオンライン会議がしにくい状況も、社員が心地よく働けるために改善したいと考えました。

――オフィス選定に際して重視されたポイントは何ですか?

コミュニケーションをとりながら新しいものを作っていくという社風に合わせて、社内全体が見渡せるワンフロアの物件にこだわりを持って、渋谷・恵比寿駅界隈で探しました。今後の採用計画を考慮して200名ほどに社員が増えても許容可能な面積でオフィスを選定しました。渋谷駅はターミナル駅でお客様先へ出向いたり通勤にあたっては便利でしたが、築浅でリーズナブルなビルは駅から遠い場所にしかなかったり、賃料水準が高額だったりとなかなか希望に近い物件がありませんでした。お客様先への訪問が減ったことで必ずしも渋谷駅である必要はなくなり、いくつか候補がありましたが、駅近で好立地、ワンフロアで天井も高くリーズナブルだったため、ほぼ即決で恵比寿の現オフィスに移転先を決めました。入居テナントは屋上にもあがることができ、気分転換ができるのも魅力です。非常に働きやすいオフィスになると感じました。

未完成さを残したデザイン

――オフィスづくりのコンセプト策定はどのように進められましたか?

エントランスや会議室をガラス張りにし、社外に対してオープンな社風であることが伝わるようにしています。デスクはフリーアドレスを採用しました。

来客用会議室は4室 床のカラーがアクセントに

デザイン面では、オフィス移転を機にさらにドライブをかけ事業を成長させていくという想いを込めて、完璧に出来上がったオフィスではなく「未完成さ」を表現しました。エントランスの天井はあえて鉄骨を見せたり、床に鉄板を据え無骨さを出すなど「ここからスタート」という気持ちを持って皆で事業を発展させていこうというメッセージを込めています。

「未完成さ」を象徴するエントランス ガラス張りで執務室が見渡せる

――「ディスカッション」「雑談」「思考」の3つをレイアウトに反映されたそうですが、どのように設計されたか教えてください。

「ディスカッション」「雑談」の面では、執務スペース内のオープンスペースに様々なテイストのテーブルやソファー席を設けました。個室の会議室はありますが、あくまでも社外の方がご来社いただいた際の利用を想定しており、社内ミーティングはオープンスペースで行うことを推進しています。聞こえてくる会話で思考が広がったり新たな価値観を得ることができるからです。部署と部署の間にオープンスペースを設置しているため、部署間のコミュニケーションや連携も自然と生まれやすくなったと感じています。

増員を見越して余裕をもたせたレイアウト

「思考」の面では完全個室の集中ブースに加えて半個室のブースも設けています。オンライン会議だけではなく、集中したい業務でも予約制で利用できるようにしています。

「Professional」「Honesty」「Challenger」「+One」4つのValueを完全個室ブースの名前に採用

半個室も数ヵ所に設置

――オフィス移転プロジェクトは社員の皆様とどのように進められましたか?

社員に驚いてほしいという気持ちから、実は社員には移転先の場所以外は伝えずに、役員と総務1名で極秘でプロジェクトを進めました。移転日の約2週間前に詳細を知った広報メンバーが、社外への発信だけでなく社内も盛り上げようとTwitterでオフィス移転日までのカウントダウンを投稿してくれました。また、今回は祝花を遠慮させていただき、その代わりに社内メンバーからオフィスにあったら嬉しいものを募集してウィッシュリストとして公開させていただきました。ウィッシュリスト内の品物をお祝いとして送っていただいたお取引先様も多く、ありがたい気持ちでいっぱいです。オフィス移転後も「もっとこうしてほしい」といった意見をメンバーから集めていますので、皆で過ごしやすいオフィスをこれから作っていきたいと思います。

――移転後の良い変化はありましたか?

移転後は特に若いメンバーが多く出社している印象で、ディスカッションや雑談の面でも様々なスペースを活用してくれている姿が見られます。オープンスペースでのリアルなコミュニケーションと集中業務のバランスがとれており、移転の意図としては成功したなと感じています。

ECやD2C支援から日本を盛り上げる

――今後の事業の展望や企業としてチャレンジしていきたいことについて教えてください。

今後さらにBOTCHANのプロダクトを拡張し、ワンストップのプラットフォームを完成させたいと考えています。現在導入いただいているブランドがより成長し、D2Cにおける圧倒的No.1のポジションをとりにいけるよう支援していきます。そうすることでユーザー様にもよりワクワクするようなブランド体験が提供できると思います。

未完成なスタートアップのフェーズを楽しみながら、一緒に事業を成長させてくれるメンバーをまだまだ募集中です。私たちが提供するサービスがECやD2Cの世界をさらに盛り上げ、日本経済にも+αになるようこれからも取り組んでいくつもりです。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

多種多様なオープンスペースが印象的なオフィスでした。ハイカウンター、カフェテーブル、ソファーなど素材もテイストも異なる家具で構成されており、気分を変えて仕事ができる空間になっています。ところどころにバランスボールやYogibo、マッサージチェア等も設置されておりリラックスできる仕掛けもたっぷり。レイアウト変更の柔軟性が高いオフィスなので、これから一緒に働く仲間が増えていくのが楽しみなオフィスだと感じました。

インタビュー・編集/服部
撮影/平井