デジタルとリアルの共存 ANDARTの働き方は次なるフェーズへ

Vol.15 株式会社ANDART

東京都港区白金台5-15-1 アド白金台ビル 1F

https://and-art.co.jp/

白金台駅からプラチナ通りを北上すると見えてくるアートスペース。そこが日本初のアート作品の共同保有プラットフォーム「ANDART」 を運営するアートテックカンパニー、株式会社ANDARTの新オフィスです。1・2Fが内階段でつながるメゾネット空間は、アートスペースとオフィスがゆるやかにつながり、靴を脱いで過ごす2Fのオフィスは隠れ家のような居心地のよさ。
2021年12月にご移転をされたアートスペース併設の新オフィスや同社の働き方についてHuman Resources Division Managerの鈴木様にお話を伺いました。

アートとあなたの間に

――御社の主力事業についてお聞かせください。

弊社が運営するANDART(アンドアート)は、ピカソやバンクシーなどのこれまで手が届きづらかった高額な有名アート作品や大型作品のオーナー権を1口1万円から購入・売却できる、アート作品の共同保有プラットフォームです。

――ANDARTの会員はどのような層の方が多いですか?

まずはアートが純粋に好きで、普段から美術館に行ったり、好きなアーティストの作品を楽しまれている方々です。単に鑑賞して楽しむだけではなく一歩踏み込んだ共同保有という体験を提供しています。最近増えているもう1つの層は投資関心層の方々です。例えば、ある作品を100万円で販売すると1口1万円×100口のオーナー権が完売した時点で購入できなくなりますが、その後は会員様同士でオーナー権を売買することが可能になっています。作品の需要が高まっている時に販売すると1万円で購入したオーナー権が購入時よりも高く売れ、差額をリターンとして得られることもあります。アートを投資という切り口から楽しんでいただいている会員様が増えてきた印象です。
投資関心層に紐づいているのかもしれませんが、トレンドに敏感な30代から40代の男性の会員様も多いです。

Human Resources Division Manager 鈴木麻友子様

所有するアートに会いにいく

――販売したアート作品はどこに保管され、作品のオーナーはどのような体験ができるのでしょうか?

運送会社様の美術品専門の倉庫が都内にあり、作品の品質を損なわない環境で保管しています。年に数回、スペースを貸し切って保有作品を展示し、オーナー様が作品を鑑賞できるリアルなイベントを開催しています。また、現在原宿で開催されているバンクシー展に合わせて、弊社が保有するバンクシーの作品をオフィス併設のアートスペースに展示してご鑑賞いただけるようにするなど、本物の作品に会える機会を提供しています。

――御社の事業の強みについて教えてください。

まず仕入れる作品の品質に強みがあります。価値の高い本物の作品を仕入れるためにはアート業界のネットワークが不可欠です。作品の将来の価値がどうなっていくのか、専門家の見解や定量的・定性的なデータに基づいて作品を仕入れています。
また、これまではアートを所有する=作品が手元にあるということでしたが、1口1万円から保有できる手軽さと、デジタル上で共同保有するという新しい体験が弊社サービスの強みです。作品が手元にないことをデメリットに感じる方もいるかもしれませんが、アート作品を適切な環境で保管することはなかなか難しいため、保管を外部に委託できると捉えることができます。

雇用形態とオフィスを見直すフェーズへ

――今回、オフィスをご移転されることになった背景について教えてください。

2021年9月に2.8億円の資金調達を行い、法人として第2創業期を迎えるにあたって、オフィスを移転したいという代表の想いがありました。これまでは代表の松園以外の社員が全員業務委託でフルリモートだったので、渋谷に借りていたコンパクトなオフィスで問題ありませんでした。しかし、今後の方向性を検討した際に、よりスピーディーな意思決定や濃いコミュニケーショシが生まれるメリットを考えた結果、新しいオフィスの必要性を感じました。2021年夏頃から業務委託のメンバーを直接雇用に切り替えはじめ、現在は役員・正社員は約10名。業務委託の方を含めて50名弱の従業員数となりました。
また、アートを広めていくという観点でいうと、作品のオーナー様たちにもっとアートを楽しんでいただける場を作りたいという想いがあり、オフィスにアートスペースも併設することになりました。

前テナントがギャラリーとして利用していた1Fをアートスペースに

――どのような条件でオフィスを探されましたか?

エリアはギャラリーが多く落ち着いた白金・代官山・青山・目黒あたりで、オフィススペースとアートスペースという使い方がしやすいことが条件でした。希望する賃料の上限をオフィス専門のエージェントに伝えて物件をご提案いただきました。

当初、中目黒駅の近くでもともと美容院だった物件が気に入ったのですが、決裁に時間がかかっている間に先行のお客様がついてしまい、借りることができませんでした。よい物件には申込が重なることを目の当たりにしましたね。その後、こちらの物件を居抜きでご紹介いただき、とても気に入り、居抜きでの募集期限が迫っていたため早急に契約を進めることになりました。

靴を脱いで2Fのオフィスへ

――新オフィスの決め手はどんなところでしたか?

白金台駅から徒歩4分とアクセスがよく、1Fがギャラリー、2Fがオフィスの居抜き物件だったところが私たちの利用イメージにぴったりでした。ほとんど内装を変更せずに入居することができ、賃料が予算内におさまったこともポイントでした。

――新オフィスでこだわられた点は?

社員が働きやすく体に負担がかかりにくいように、オフィスチェアにはこだわりました。リフレッシュするために窓際にYogiboも置いています。代表の松園が色々な家具屋さんに足を運んでイメージを作っていきました。
オフィス出社のメンバーとリモートのメンバーがおり、全員が一度に出社することはないので基本的にはフリーアドレスを採用し、場所を変えながらコミュニケーションがとりやすいレイアウトにしています。

――オフィス移転後の変化があればお聞かせください。

多くの企業様はオフィス出社がコロナ禍でリモートに切り替わりましたが、私たちはフルリモートからオフィス出社もできるようになったという逆のパターンです。各メンバーが翌週の予定をオンライン上のカレンダーに入れ、出社かリモートか分かるようにしています。正社員やフルコミットでフルタイムに働いているメンバーは、週3日出社、週2日まではリモートワークでOKという働き方を取り入れ、試験的に運用しています。コロナウイルスの感染拡大状況や業務の生産性を見ながら柔軟に対応していくことになると思います。

造作の一角がさりげなくステーショナリー収納になっている

ホワイトやアイボリー系が多めの柔らかなテイスト

――オフィスに出社されるようになっていかがですか?

リモートワークだと、1対1や画面上にいる人のみでしか会話が生まれませんが、出社すると周りの人の話が聞こえるので「それってこういうことですよね」「だったらこうしましょうか」と会話に広がりが生まれ、業務や意思決定のスピードが上がったように感じています。他のメンバーがどんな温度感でどんなことを考えたり悩んだりしているのか、顔色を見ながら理解できるのはオフラインならではですね。

プラチナ通りを見渡せる特等席

テクノロジーでアートと社会を結び、拓く

――今後の事業や組織の展望について教えてください。

コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてくれば、オーナー様同士のコミュニケーションやつながりが深まるような場をもっと提供したり、採用の側面からはエンジニアの方を対象にした勉強会を開催したいと考えています。現在は特にサーバーサイドエンジニア、フロントエンドエンジニア、そしてPdMを募集しています。建設的に物事を捉え、主体的に自走しながら業務に携わることができる方と一緒に、プロダクト面から事業を推進し、会社を大きくしていくことができたら嬉しいです。

コロナ禍で在宅時間が増えたことで自宅でもアートを飾って楽しむ方が増え、弊社が運営する手に届く価格から本格アート作品を提供するオンラインストア「YOUANDART」でもアーティストの作品の売れ行きは好調です。日本のアート市場も少しずつ広がってきていますので、弊社が提案する新しいアートの保有の仕方、楽しみ方を日本のスタンダードにしていきたいと考えています。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

多くのことがオンラインで実現可能になってきたからこそ、オフィスでリアルに会社のメンバーに会うことも、アートをリアルに鑑賞することもこれまでより感動や重みが増すのかもしれません。
誰かと同じ空間で働くのと自宅で1人で働くのとでは、目や耳から入ってくる情報が全く異なります。その日の業務内容によって出社とリモートどちらが高いパフォーマンスを発揮できるかを考え、働き方を選択している方が最近増えてきたように感じます。

インタビュー・編集/服部
撮影/西崎