ワーケーションのすすめ|e-Janネットワークス株式会社

法人向けリモートアクセスサービス「CACHATTO(カチャット)」や「NinjaConnect」を開発・提供しているe-Janネットワークス株式会社。自社ツールを利用したテレワークを続けながら、社員の声を制度化し先進的な働き方を実践されています。そんな同社で2021年7月から本格始動したワーケーション制度と、社内から様々な施策が生まれるカルチャーについて、今回のワーケーション制度策定に関わられた飯間様と成瀬様にお話を伺いました。

経営企画室 飯間彩紀子様 広報をご担当 開設前の函館サテライトオフィスではワーケーションのトライアルを実施

経営企画室 成瀬蓮様 内部監査やテレワーク推進業務をご担当 今回のワーケーション制度の導入・運用を担う

「これe-Jan!」と言ってもらえるサービスでテレワーク市場を牽引

――コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入しましたが、リモートアクセスツールを提供されている御社へのご相談はどのような内容のものが多かったですか。

飯間:コロナ禍で急激にテレワークへの移行が進みましたが、お客様からはセキュリティ面やコスト面での課題が多く寄せられました。コロナ禍以前はほとんどの企業でテレワークの対象者が一部の方に限定されていましたが、ほぼ全社員がテレワークの対象者となった際に、情報漏洩が心配だという声や、全社員に新たな端末を会社が支給するのは難しいのでなるべくコストを抑えたいというご要望が多かったです。リモートアクセスツールの開発を約20年間手がけているという点で安心感を持っていただけるお客様が多く、今までリモートワークへの移行があまり進んでいなかった官公庁や自治体、個人情報の取り扱いが多い金融や保険業界などにも多く導入いただいています。

――御社が提供されている「CACHATTO」 や「NinjaConnect」ではどのようにセキュリティ面やコスト面での課題を解決できるのでしょうか。

飯間:弊社のリモートアクセスサービスでは端末にデータを残さずにテレワークが可能なので、社員の自宅にある私物のパソコンを利用していただくことが可能です。そのため会社が新たな端末を各社員に支給する必要がありません。また、特に「NinjaConnect」はワイヤレスLANをつなぐような感覚で誰でも簡単に設定ができるため、社内に情報システム部門や専任の担当者を置く必要がないという点で人的コストも抑えることが可能です。

――御社は東京・大阪・高知・インドにオフィスを構えておられますが、それぞれのオフィスはどのような機能をもたれておりどのくらいの人数が所属されていますか?

飯間:東京本社は本社機能(総務・人事・労務)と営業・サポート・開発・企画の部門があり、約100名が所属しています。大阪の西日本営業所は営業メンバーを中心に約5名、高知テクニカルセンターは主に品質保証部門のメンバーが約20名、インドは弊社ツールの開発拠点となっており、現地で採用した13名が所属しています。

――高知やインドに拠点を展開された理由を教えてください。

飯間:地方に品質保証部門の拠点を作ろうと様々な自治体に問い合わせしましたが、高知市は行政のサポートの手厚さと自治体のご担当者様の企業誘致への熱量が素晴らしかったという点が大きな理由です。地方都市の中で、沖縄等と並んで高知は群を抜いて他者を受け入れる寛容性があるというデータもあるようです。インドオフィスについては、創業間もない頃から代表の坂本と共に弊社で歩んできたインド人メンバーが東京から故郷に戻るのをきっかけに開発拠点をインドで立ち上げました。

高知城を臨む高知テクニカルセンター

――それぞれのオフィスの状況や、コロナ禍での変化があれば教えてください。

飯間:コロナ禍以前、東京本社は6Fと7Fの1.5フロア合計450㎡を賃貸していましたが、コロナ禍で出社人数が激減したため7Fを解約し、現在は約300㎡に入居中です。今後6Fもさらに半分の面積を返却する予定があります。大阪の西日本営業所は堂島のオフィスビルの1室約160㎡を賃貸しています。高知テクニカルセンターはビルの6Fと9F合計で220㎡あるのですが、これから1Fも増床し、外部の方も利用できる産学連携の拠点として改装する予定です。元銀行で金庫室もある区画なのでそれをうまく活かしてVRの映像を壁に投影し、あたかもその場所にいるかのような空間をつくろうと計画中です。投影する映像を学生に制作してもらおうというアイディアもでています。

成瀬:インドでは世界的なサービスオフィスであるWeWorkに入居しています。私も現地を訪れたことがあるのですが、インドでは仕事の日も毎日お茶を飲みながらくつろぐ習慣があるので、同僚と一緒に私もチャイを飲んで一休みしたのを覚えています。

――社員の皆様や御社に応募される求職者の方は会社や事業のどのような点を魅力に感じておられますか?

飯間:弊社がリモートアクセスツールを開発している企業なので、テレワークをはじめとする柔軟な働き方ができる点、働きやすさに魅力を感じているメンバーが多いと思います。自社の事業が社会貢献に繋がっていることにも誇りをもっています。また、社長と直接コミュニケーションをとれる機会も多く、風通しのよいカルチャーも魅力だと私は感じています。

ワークエンゲージメントを高める施策は社員の声から

――御社では自社サービスの利用によってコロナ以前からテレワークを推進されていますが、テレワークならではの課題は今までありましたか?それをどのように工夫・改善してこられましたか?

飯間:当初あった課題の多くは解消されてきていますが、全社的にテレワークを開始した初期段階ではコミュニケーションの取りづらさはありました。隣にいれば気軽に聞けるちょっとした業務の相談がしづらくなった点や、業務以外の雑談をする機会が急激に減った点が課題でした。

――それらの課題をどのような施策で乗り越えてこられましたか?社員同士のコミュニケーションを活性化するために工夫されていることがあれば教えてください。

例えばグループTMC(=Ten Minutes Coversation)という取り組みをしています。もともとコロナ禍以前は社長と社員が1ヵ月に1度、1対1で10分間話す時間を設けていたのですが、コロナ禍以降は複数人でも話したいという声が多くあり、経営陣も含めて会社側でランダムに抽選した4名が毎月オンラインでコミュニケーションをとっています。他拠点のメンバーや新しく入社したメンバーと話す機会は貴重でとても面白いです。話すテーマはどんな内容でも構わないので、最近では映画やゲーム、某小売りチェーンの一押し商品やおすすめのガジェットなどの話題で盛り上がりました。
また、全社員が参加する毎週のオンライン朝礼では、最初と最後に3分間スピーチの時間を設け、毎回各メンバーが順番に好きなトピックで話し相互理解を深めています。

――メンバーの趣味や意外な一面が知れて面白そうですね。御社にはユニークな施策が他にもたくさんありますが、その中でも特に利用率の高いものや社員から好評な施策についてお聞かせください。

飯間:ほぼ100%利用されている施策は、2021年4月に運用を開始したテレワーク環境準備一時金です。雇用形態問わず一律10万円を支給し、テレワークによって業務上必要となった机や椅子、モニターや備品の購入などに充てられるようにしました。

成瀬:テレワーク手当も会社がだしており、毎月定額の手当とテレワーク日数に応じた手当があります。在宅日数が多いと光熱費もかさみますし、追加で購入する備品もでてくるのでとても助かっています。

――様々な取り組みが生まれる企業風土やカルチャーについて教えてください。社員からの意見を拾いあげる仕組みなどがあるのでしょうか?

飯間:弊社ではCrossComという自社開発の日報システムを利用しています。社員が書いた業務報告を全員が確認でき、他のメンバーがSNS形式でスタンプやコメントをつけられるので、誰かの悩みが他のメンバーの提案で解決されたり、誰かのアイディアが共感を生んで実現されたりとコミュニケーションが活発になっています。例えば「家族でワーケーションに行きたい」という声があがれば代表の坂本が「検討しよう」と返信したり、社員が普段考えていることを気軽に発信しやすい環境があると思います。

トライアルを経てワーケーション制度本格始動

――今回策定されたワーケーション制度はどのようなきっかけでスタートしましたか?

成瀬:私自身が自宅でテレワークをする中で「沖縄でも働けるのではないか」という想いがふつふつと沸いてきて、一度沖縄からテレワークで働かせてもらえないかと会社に打診したことがきっかけです。もともとマネジメント層の中でワーケーションの話題はでていたこともあり、トライアルの許可をもらうことができました。トライアル用に仮制度を急遽作ってもらい、1ヵ月間沖縄本島に滞在しながら働きました。このトライアルのワーケーションの感想を社内に共有したところ、ぜひ本格的に制度化しようということになりました。弊社は社員の約20%が外国人で出身国は13ヵ国にわたります。コロナ禍で2年近く故郷に帰れていない状況が続いていたため、もちろん本人たちも帰省したがっていましたし、中間管理職のメンバーも彼らをぜひ長期で帰省させてあげたいと感じていました。ワーケーション制度ができるまでは長期で帰省するためには休暇を利用するしかありませんでしたが、制度ができることで働きながら自分の故郷に滞在することができます。こうした背景や現場の声が制度実現の一番の後押しとなったように思います。

――ワーケーション制度の概要や運用方法について教えてください。

成瀬:各年度で最大60営業日まで(連続取得日数は原則20営業日までであるものの、上長への相談で延長も可)ワーケーション取得が可能です。ワーケーションの場所は問いませんが、弊社の拠点のある場所でのワーケーションであれば交通費と宿泊費の補助が会社からでます。

交通費…1回上限5万円を支給、年3回まで。
宿泊費…1回上限5泊まで、1泊一律5,000円を支給、年3回まで。(※e-Janネットワークス拠点オフィスで業務した日数分を支給)

申請はすでに社内で利用している決裁システムで行い、上長から許可をもらいます。現時点の制度ではワーケーション取得後にレポートの提出などは求めていませんが、社内ポータル上からアンケートへの協力を依頼します。実施場所などの基礎情報と自分の仕事のパフォーマンスへの評価や満足度、今度もワーケーションを実施したいか等を回答してもらい、それらを集計した上で定期的に制度の改善を図っていく予定です。

――ワーケーション制度の本格始動までにトライ&エラーを繰り返されたとお伺いしていますが、どのような経緯で今回の制度に至ったかお聞かせください。

成瀬:昨年、ワーケーションのトライアルを実施した際は5名しか利用者がいませんでした。制度を作るだけでは人の目を気にして利用しない人も中にはいますし、金銭面でも会社が負担しないと利用は促進されないことをその時に実感しました。そこで本制度スタートに向けて、函館にもサテライトオフィスを作ったり、交通費や宿泊費の補助制度をしっかり整えることで利用を促進しようと現制度に至りました。

ワーケーション体験者の声

――トライアルでのワーケーションについて教えてください。成瀬さんは沖縄でどのように過ごされましたか?

沖縄本島の南部の豊見城と中部の読谷に滞在しました。平日の日中は宿泊先でテレワークを行っていたので普段とあまり変わらないのですが、自己隔離期間が明けた後は仕事終わりや休日に海で泳いだり浜辺で読書をしたりできたのは都内との大きな違いですね。オンとオフの切り替えは都内でテレワークをしている時よりしやすいと思いました。滞在時期がちょうど沖縄のお盆の時期だったのでウークイという行事に参加したり、沖縄の新聞から経済状況を知れたり、場所を変えることで入ってくる情報も変わることが体験できました。直接仕事に関係なくても、仕事のネタになることは多いと思います。ワーケーションを1回しただけで生産性はあがるかは分かりませんが、長期的なスパンで見た時に働きやすさや、気分転換できる機会があることは生産性の向上につながると思います。

滞在先のホテルからすぐのビーチ

――函館のサテライトオフィスは開設に向けてどのように進んでいますか?

飯間:函館でサテライトオフィス用の物件を探すために代表の坂本が視察に行きましたが、もともと喫茶店だった店舗区画を一目で気に入り、スムーズに契約を進めることができました。その物件は小高い丘の上に建ち、窓からは海も函館の街並みも見下ろせるとても景観のよい場所にあるんです。喫茶店で使用されていた椅子のままだと仕事には向かないため、これから業務に適した椅子に入れ替え、もうまもなくオープンできそうです。ワーケーション制度を開始した直後、コロナ第5波で緊急事態宣言下となり、行き来を推奨できない状況が続いておりましたが、解除後は感染対策を十分に行いながらぜひ利用を促したいと思っています。釣りや食い倒れツアーを兼ねて函館にワーケーションに行きたいと楽しみにしてくれているメンバーもいます。

1Fにはアイスクリーム屋さんが入居中 2Fがサテライトオフィス

ふと窓に目をやればこんな景色が眼下に広がる

飯間:私も函館と高知でワーケーションのトライアルを体験したのですが、とてもリフレッシュできました。月に1~2回の出社以外普段はテレワークなので、外に散歩に行くにしてもあまり変わらない風景ですが、ワーケーション先では外に出ると日常と異なる風景が広がり新しい情報がたくさん入ってきます。高知では他拠点のメンバーとの交流もできてエネルギーをもらえましたね。

――これから様々な社員の方が取得されるのが楽しみですね。最後になりますが、ワーケーション制度の利用促進のために今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

成瀬:まだスタートしたばかりの制度ですが、今の制度だと社員1名に対してしか交通費や宿泊費の補助は支給されないので、家族で長期滞在ができるように、例えば会社がホテルを借り上げることなども含めて検討していきたいなと考えています。

――新制度について詳細をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

ワーケーション制度の実施場所選定から制度内容、運用方法まで具体的なお話をお伺いすることができました。今後ワーケーション制度の導入を検討される企業様の参考になれば幸いです。オフィスナビでは日本全国でオフィス開設やご移転のお手伝いをしております。オフィス探しからオフィスづくりまで一貫してサポートが可能ですので、地方都市でのオフィス探しもお気軽にご相談ください。

インタビュー・編集/服部
撮影/西崎