社員全員が同じ方向を向くために。会社のカルチャーを随所に感じるオフィスの仕組み

Vol.12 アイグッズ株式会社

東京都渋谷区恵比寿1-23-23 恵比寿スクエア 6F

https://www.i-goods.co.jp/

2021年7月に恵比寿へオフィスをご移転されたアイグッズ株式会社。マーケットの変化にいち早く対応しながら急成長をとげる同社の創業から4度目のオフィス移転について、クリエイティブセクション 広報・PRチームの根岸まりの様にお話を伺いました。

クリエイティブセクション 広報・PRチーム 根岸まりの様

コロナ禍でスタートした自社生産商品の展開

――御社ではオリジナルグッズの制作を手掛けられていますが、この数年間で事業や取扱商品に変化はありましたか?

私たちは今までフルオーダーでお客様の販売用オリジナルグッズやノベルティ、コンサートグッズなどの制作を手掛けてきましたが、メーカーという立場で自社商品を生産したことはありませんでした。しかし、コロナ禍でお客様からマスクの取り扱いがないかというお問合せを多くいただき、運がよく海外生産をしている中国のマスク工場との繋がりがあったため、私たちもメーカーとしての事業をスタートすることになりました。2020年4月から「コロナ対策の達人 コロタツ」というサイトをオープンし、現在では主力となる飛沫防止アクリルパーティションだけでも51種類、コロナ感染対策グッズは50種類以上展開しています。

――2020年4月というと最初の緊急事態宣言が出たくらいの時期ですが、とても早いご決断をされたのですね。

2020年2月下旬頃からマスクが不足することを見越して準備を進めていましたね。

――コロナ対策グッズ以外にも自社商品は展開されていますか?

コロナ感染対策グッズの生産でメーカーのノウハウが得られたため、最近ではサスティナブルグッズも展開するようになりました。お客様からのご要望で「再生利用可能な生地や素材はないか」というご要望が増えてきたため、自社で商品を開発し、コーヒー抽出後のコーヒーかすから作られたタンブラーやノートブック、ココナッツの皮から作られたエコバックなど7種類のグッズを現在販売中です。多くの企業がサスティナブルグッズに興味をお持ちですが、大きなネックとなるのは価格や生産背景のようです。弊社は、企画・生産から納品まで全て自社でワンストップで行う事業モデルのため、価格が抑えられ、また「どうエコなのか」という生産背景もしっかり説明させていただきます。ご予算内で安心してサスティナブルなグッズ制作に挑戦できる点をご支持いただいています。

――グッズ制作のマーケットは変化していますか?

グッズ制作の市場規模全体は縮小傾向にあるといえます。ノベルティがLINEのポイントに変わるなどデジタル化が進んでおり「モノ」より「コト」の時代になったと言われています。また、イベントが中止になってグッズが不要になったり、グッズを扱う企業様が業績不振になってしまったりとコロナの影響は大きいです。ただ、日常生活においていきなりグッズが不要になるわけではありません。目まぐるしく状況が変化していく中でも、私たちのようにこれから必要とされるグッズは何なのか常に新しい視点を持って即座に対応した企業は成長していると思います。

安全なオフィス勤務を実現する制度

――コロナ禍での働き方に変化はありましたか?

率直に申し上げますと、実はそこまで出社状況は変わっておりません。一番最初の緊急事態宣言の際は出社7割減、可能な限りリモートワークを行いましたが、グッズを扱っているため、品質管理のための検品や商品の発送は出社して行う必要がありました。ただ救いだったのは、弊社では徒歩通勤推奨の福利厚生制度があり、数名を除いた95%の社員が会社から徒歩圏内に住んでいます。公共交通機関を利用せず安全にオフィスに出社できる体制があったからこそ、コロナ禍でも急成長できたのだと思います。

――そんなに多くの方が会社付近にお住まいなのですね。

徒歩補助金は以前からありましたが、コロナ禍でさらに追加で2万円の「コロナ徒歩金」が設定されました。また、オフィス出社時の感染対策への意識向上を目的に「コロナ菌撃退金」制度も新たに設け、A4サイズ約2ページの感染対策チェックリストを提出することで補助金が支給されます。代表のアイディアも多いですが、年2回の経営方針発表会の際に福利厚生に関するアンケートを社員にとり、満足度や必要な制度・不要な制度について社員からの意見をキャッチアップしています。

社内シェフ制度も社員の声から実現 12時になると温かな料理が提供される

求めたのは機能性と企業文化の反映

――前オフィスについて、またご移転までのスケジュールについて教えてください。

前オフィスは港区三田にあり、麻布十番駅が最寄りの約115坪のオフィスでした。2021年にはいってすぐにオフィス移転の話が浮上し、代表の物件選定によって256坪の恵比寿スクエアに移転することが決まりました。春から内装コンペや工事が急ピッチで進み、2021年7月に新オフィスに移転しました。

――物件選定にはどのような要素を重視されたのでしょうか。

弊社にはグッズディレクターと呼ばれる企画営業職がいて、お客様との商談時にノートパソコン1台だけではなくたくさんのグッズを抱えて訪問する必要があるため、オフィスの立地や駅からの距離は重視しました。また、社員がオフィスの徒歩圏内に住むことを想定して、社員が住みたいと思う街、社員の満足度につながるようなエリアを重視したと代表から聞いています。オフィス移転に伴って、多くの社員が住居も恵比寿に引っ越ししました。

――今回のご移転の目的や移転によって解決したかった課題があれば教えてください。

社員約35名(パート・アルバイト含めて約45名)に対して、2022年春には新卒が9名の入社が決まっています。急成長に伴ってオフィス面積が足りなくなったこともありますし、オンライン会議の増加によって音の問題が多々ありましたので、オフィス移転を機に改善したいと考えていました。前オフィスはオープンスペースは多かったのですが、パーソナルスペースがほとんどなく会議室も欄間が開いていたため、人事面談などの込み入った話を社内ですることが難しい状況でした。オンライン・オフラインそれぞれの会議をストレスなく行いたいという要望が社員からも多かったですね。社員にアンケートをとったところ、商品の展示スペースをもっと増やして事業につながるようなオフィスにしたいという声や、緑の多い洗練されたオフィスを希望する声もありました。

1~2名用の会議ブースは計15ヵ所 各部屋にはテーマにあったオリジナルの壁紙を

ルーム名は「coffee」 コーヒーかすからサスティナブルグッズを作る会社ならでは

――オフィスづくりや内装について御社が重視されたポイントはどんな点ですか?

まず、業務のしやすさという点が一番ですが、パーソナルスペースはきちんと確保されながらミーティングが突発的に起こる工夫があるといいなと考えていました。集中できる環境とフラットな会議の両立は今回のオフィスから特に重視しましたね。デスク周りに立って気軽に打ち合わせが始められるよう高さのあるカウンターを設置したり、オフィスのあらゆる場所に充電スポットを配置しています。

一見コースターのようにみえるプレートがオフィスのあらゆる所に この上にスマートフォンを置くだけで充電が可能

――レイアウトや内装でこだわった点・工夫された点を教えてください。

奇抜さやきらびやかさを狙うのではなく、会社のカルチャーをオフィスのデザインから日常的に感じられるように工夫しています。例えば、東証の鐘からインスパイアして設置した「感涙の鐘」は、賞賛する文化の浸透やチームワークを強固にしたいという狙いがあり、良い出来事があれば鳴らし、皆で喜びあえるようにしています。また、SDGsをテーマにしたデザインの会議室を作ったり、WEB会議ブースのネーミングに会社の行動指針やSDGsの重点目標を採用しました。

会議室の壁紙はコーヒーかすを再利用して作られている

エントランスには「1000年成長し続ける会社へ」の文字が

成果を上げると鳴らすことができる「感涙の鐘」

社長室は海をテーマに

弊社では採用にも注力しているので、ワクワクするようなオフィスという点も重視しました。オフィスにいらっしゃるお客様や学生の方々によりお喜びいただくためにも、社内にカフェを作る構想がもともとあったのですが、エントランス入ってすぐの意外性のある場所に設置することによって「本当にオフィスなの!?」と入り口からワクワクしてもらえるきっかけづくりをしています。オフィスのこだわりポイントを説明する際には、その本質となる会社のカルチャー、例えばカフェであれば「ご来社いただいた皆様をもてなしたい」「社員の健康も守りたい」という”背景”の部分もきちんと伝えるようにしています。

カフェは学生アルバイトが運営 運営方針を定めたクレドまで彼らが考えたそう

ナッツやドライフルーツなど、軽食もズラリ

また、子供がいる女性社員は現状1名なのですが、弊社は社員の8割が女性なので今後を見据えて赤ちゃんルームを設け、子連れで出社して仕事ができるようにしました。現状はベビーシッターがいるわけではありませんが、ママが同じ空間で業務をしたり、カフェのアルバイトスタッフが目配りしてくれています。仕事が面白いと言ってくれている社員が多く、結婚や出産後も仕事に復帰したいと言ってくれている社員が多いので、それを叶えられるよう環境を整えました。

赤ちゃんルームは靴を脱いで過ごせる小上がり式

部屋のマークまで手を抜かずデザイン

赤ちゃんルームの隣にはシックなテイストのおじさんルーム ネーミングには遊び心も忘れずに

――ご移転後にオフィスのお披露目セレモニーを開催されたそうですが、当日の様子を教えていただけますか?

コミュニケーションが希薄になりがちなコロナ禍でも、社内のチームワーク強化や笑顔は自粛せず働く楽しさを社員が体感できるようにしたいという想いから、感染対策を万全にとった中で7月16日にセレモニーを開催しました。当日は、在宅勤務希望の一部のメンバーを除いたほとんどの社員と2022年入社予定の新卒内定者が参加し、新オフィスのお披露目が行われました。こだわったポイントやその裏に隠された会社が大切にしている考えを再共有し、改めて組織愛を感じる時間になったと思います。また、オフィス移転を機に共通の思い出を作りたいということで、壁の1区画を参加社員の手形でペイントするプログラムがとても盛り上がりましたね。参加者からは「形に残るっていいね」という声もあがりましたし、内定者も会社やメンバーへの理解が深まり喜んでくれました。これから入社する新メンバーの手形も増えていけば目にみえる形で壁に描かれた木も大きく成長していくので、とても楽しみです。

社員の手で彩られたweb会議室の一画

廃棄物ゼロの循環型社会をものづくりから実現したい

――最後に、今後の事業の展望についてお聞かせください。

既存事業はもちろん注力しつつ、新しい挑戦を2つ掲げています。まず1つ目に、モノづくりの循環に挑戦していきたいと考えています。多くの企業がSDGsをテーマに掲げているものの、何から始めたらいいのか悩んでいる企業も多いと思います。私たちは、サスティナブルグッズを作ることが正義だと発信するのではなく、一歩を踏み出したいが選択肢がないという企業様に、例えば、普段使っている社内のカトラリーや梱包材をプラスチックから再生資源の物に変えるところからスタートしませんかという提案をしたり、少しずつでいいので生産者として選択肢を提供していけるような会社になりたいと思います。また、私たちは回収したコーヒーかすをモノづくりに活かしていますが、現在は海外のコーヒーかすを回収してくれる業者様に依頼しています。今後は日本国内のコーヒーメーカー様からコーヒーかすを回収して再生し、国内で循環を完結できるようにしていくことも検討中です。”捨てる”という概念を世の中からなくしたいという大きなビジョンを掲げて、モノづくりから廃棄物の再生に尽力していきます。

2つ目は、まだ構想段階ではありますが、誰でも高品質のオリジナルグッズが作れるプラットフォーム事業を展開できれば面白いなと考えています。今、一般消費者ができるグッズ制作というと名入れやロゴ入れ、Tシャツの一部にプリントといった簡易なものが多いですが、一般消費者と工場を直接つなぐことで、もっと柔軟に様々な選択肢が提供できると考えています。万が一トラブルが起きても私たちのノウハウを活かして介入することが可能です。グッズ制作をより身近に感じていただけるよう、BtoCのマーケットやIT業界にも進出していきたいと思います。
今後も”業界の異端児”として、さまざまな挑戦を先駆けて行っていきます。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 

編集後記

会議室の名前がどれもとてもユニークで、どの部屋を予約したかという日常の会話から会社が大切にしているキーワードを自然と声に出す機会、聞く機会が増えるのが想像できます。オフィスのあらゆる場所でデザインの背景にはきちんと会社のカルチャーを身近に感じられる工夫が見られました。会社が社内外に発信したいことをオフィスづくりに取り入れてみてはいかがでしょうか。

インタビュー・編集/服部
撮影/平井