交流を生み出す動線設計 “MOBILOTSらしさ”を体現したオフィスへ

Vol.53 MOBILOTS株式会社

東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル 44・49階

https://www.mobilots.co.jp/

2026年4月、MOBILOTS(モビロッツ)が増設・改修を経て、オフィスを一新しました。合弁会社ならではの多様なバックグラウンドを持つ社員が集う環境のもと、“モビロッツらしさの体現”と“コミュニケーションの創出”を軸にオフィスを再設計。タイヤの廃材や道路をモチーフにしたデザインを取り入れることで、事業とのつながりが感じられる空間となっています。今回は、本プロジェクトを推進された人事総務部の岩田様に、オフィスに込めた想いや背景について伺いました。

人事総務部 人事総務G 岩田 今日子様

目指すのは運送業界の未来をリードする企業

――御社の事業内容や働き方について教えてください。

当社は商用車リースを事業軸としている会社です。例えば運送会社様がトラックを保有される際、現金で購入する方法もあれば、リースという形で導入するケースもありますが、その中で当社はリースの契約・提案を中心に事業を展開しています。

リースと一口に言ってもさまざまな種類があり、単純に車両本体の費用を分割でお支払いいただくものもあれば、「メンテナンスリース」と呼ばれる、車両の故障やメンテナンスの費用をあらかじめ月額に組み込み、維持管理まで含めたサービスとして提供する仕組みもあります。運送会社の皆様にとって車両の故障は避けられないリスクでもあるため、こうした仕組みは、運送会社の安定した収益を支える役割を果たしています。

また、最近ではDX領域にも注力しています。運送業界では紙ベースでの管理が残っている企業も多く、ドライバーや車両の管理をデジタル化することで、業務効率を高めるようなサービスをご提案しています。このように、商用車リースを軸に幅広いサービスを展開している点が特徴です。

当社は2019年に設立された比較的新しい会社で、トヨタファイナンス株式会社、住友三井オートサービス株式会社、日野自動車株式会社の3社による合弁会社として、それぞれの強みを掛け合わせながら、新たな価値創造に取り組んでいます。

働き方についてですが、リモートワークは、部署ごとの業務特性に応じた形で運用しています。リース業界の特性上やはり書類を多く扱う部署もありますが、比較的ペーパーレスで業務が完結する部署もあるため、それぞれの業務に適した働き方を選択しています。

また、育児や介護など、ライフワークと両立して働くことができるよう、ダイバーシティ推進にも力を入れています。当社は、男女ともに育休取得率が100%ですが、復帰してから働き続けられる環境を整えることも大事だと思っています。

例えば、男女に関係なく、子のお迎えや家族の夕飯作りがある日は、一時的に業務から抜けることができる「離業」を使っている人もいます。その他、「フレックス出社・退勤」もそうですが、制度が形骸化されず、そして、属性に関係なく様々な方に使っていただけているところを見ると、担当として嬉しいですね。

――現在、座席はどのように運用されていますか。

実は3年ほど前に一度、フリーアドレス化を進めようとしたことがあったんです。ただ、結果としてはうまく定着せず、最終的には固定席での運用に戻ってしまいました。その要因はいくつかありますが、一つは単純に固定席の方が慣れており、業務を円滑に進めやすかったためです。

もう一つは、当社が3社の合弁会社であるという背景です。出向として勤務する社員も少なくないため、どうしても心理的な距離感が課題としてありました。同じ会社にいながらもどこかよそよそしさが残る中でフリーアドレスを導入しても、なかなか活用が進まなかったというのが実態です。

合弁会社ならではの組織課題

――新オフィスのコンセプトを教えてください。

改修プロジェクトのスタートは“人員増加に伴う席数の確保”というかなり現実的な理由でした。そこから「このスペースをどう使うか」という議論が始まり、改めてオフィス全体の課題と向き合うことになりました。

その中で浮かび上がってきたのが、”コミュニケーションの不足”による会社としての一体感の弱さです。フロアの分断や出向元の違いによる心理的な距離感など、さまざまな要因で人と人とのつながりが弱くなっている現状がありました。フロアを跨ぐことで関わりの持たない社員が増え、他の階の動きも把握しづらく、結果として2フロアが別会社のように分断されてしまっているような状態でした。

増床したスペースに既存のレイアウトをそのまま拡張するだけであれば、そこまで難しいことではなかったと思います。ただ、この機会にこれまでのオフィスの課題を解決できないかと考え、本プロジェクトでは「人の交流が生まれる動線」をコンセプトとして設定しました。

44階 フリーアドレスエリア・リフレッシュスペース

座席移動にも便利なよう、モバイルバッテリーを完備。

名札の右側には趣味を書く欄を設け、会話のきっかけに。

――改修にあたって、社内からどんな要望がありましたか。

改修が決まる前から、それぞれの部署から「これが使いづらい」とか「会議室が少なすぎる」といったオフィス周りの要望が常に寄せられていました。今回のような大きな工事の機会を活かし、できるだけそうした課題を解決したいという思いで、レイアウトや間仕切りを検討していきました。

――プロジェクトは具体的にどのように進んでいったのでしょうか。

10月にテナントの空きが出たという情報を受け、そこからプロジェクトが動き出し、コンセプト設計や業者選定を進めていきました。11月には大枠の方向性が固まり、12月は主に社内調整に時間を費やしました。

今回最も大変だったのは、業務の稼働を止めずに工事を進める必要があったことです。全体を閉鎖して一気に工事することができなかったため、エリアごとに工事を行いながら社員の配置をパズルのように組み替えていました。どの部署をどこに一時移動させるのか、その間の業務をどう回すのかといった調整をひたすら繰り返していましたね。

1月に増床エリアの工事がスタートしましたが、既存エリアに関しては改修に伴い社員の協力が必要となるため、下旬に全社員向けの説明会を実施しました。非常にタイトなスケジュールの中、短期間で集中的に進めたプロジェクトだったと思います。

窓からの眺望

一体感を生み出すオフィスを

――本プロジェクトで大変だったことや印象的なエピソードを教えてください。

今回の工事を通して強く感じたのは、社員一人ひとりの働き方を理解しないと、オフィスづくりはできないということです。例えば、朝出社してからどこで仕事をして、昼はどこで過ごし、夕方はどのタイミングで休憩を取るのかといった一日の流れを把握していないと、適切なレイアウトは設計できません。

そのため什器を一つ置くにしても電源の位置をどうするか、誰がどれだけ端末を使うのかといった細かい部分まで考える必要がありました。これほど社員一人ひとりのことを考え続けた数ヶ月は、これまでなかったのではないかと思います。

総務の仕事はサポート役であり、どうしても裏方に見えがちですが、今回のプロジェクトでは会社の前線に立ち、働き方やオフィスのあり方に向き合うことができました。オフィスについて社員と直接話す機会も増え、それぞれの業務や働き方への理解がより深まったと感じています。話を聞く中で得た気づきは非常に印象的で、人事総務部として働くうえでも大きな学びになりました。

什器やデザインの選定にあたっては、オフィスナビさんにもご案内いただき、他社様の事例を実際に見学しました。コミュニケーションを自然に生み出すための設計には、例えばゴミ箱を執務室の中心に集約することで、ゴミを捨てに来るまでに会話が生まれるようにしたり、什器の高さを抑えて視線が合うようにしたりと、さまざまな工夫があることを知りました。こうした経験を通して、オフィスづくりの奥深さを改めて実感しました。

44階 執務室でもゴミ箱を中心に集約

――コンセプトを踏まえ、レイアウトや内装設備で特にこだわったポイントを教えてください。

使いやすさとコミュニケーション設計、そしてモビロッツらしさを軸に、什器や工事内容を決定しました。実際に椅子に座り、テーブルに触れながら、一つひとつ使いやすい什器を選定する中で、「総務は今どきのオフィスを作りたいだけで、デザイン性を重視しているのではないか」といった声もありましたが、そうした印象を持たれないようにという意識もあり、見た目だけでなく実際の業務で使えるかどうかという点を非常に重視しました。

デスクの仕切りにドライフラワーを取り入れ、色や香りも楽しめる空間に。

また、コミュニケーションについては社内だけでなく、社外のお客様や取引先との交流も生まれるような仕掛けを取り入れたいと考えていました。そしてモビロッツらしさという点で、会社への愛着を高めるきっかけを増やしたいという思いもありました。
自分の担当業務だけでなくモビロッツ全体を理解する機会がこれまで少なかったため、そうした垣根を取り払い、会社として一体感を持てるような象徴的な要素を空間にも反映させることを意識しました。

会議室から社内を見渡せる設計。

“モビロッツらしさ”とは

――サステナビリティやダイバーシティを推進したデザインも多く活用されていますね。

そうですね。例えば、会議前のちょっとした会話の中で「このデスクいいですね」といったやり取りから、サステナビリティやダイバーシティの話題につながっていけばいいな、という想いがありました。会社としてのブランディングの面でも、モビロッツの取り組みが伝わる要素になるのではないかと考えています。

サステナビリティやダイバーシティは一度に大きく取り組むことが難しい分野ですが、まずは目に見えるところから取り組んでいこうと考えています。また、消費行動の観点でも大量生産・大量廃棄は大きな課題となっているため、コストだけを優先すれば安価に抑えることもできますが、地球にとって優しいものを選び取っていくというメッセージも込めて、設計会社にもその意図を共有し、形にしていただきました。

デスクをよく見ると、素材の繊維が見えるデザインに

――こうした空間づくりを支える制度や取り組みについては、どのようなものがありますか 。

どうしても、オフィス空間は無機質な什器が並びがちになりますが、リフレッシュルームこそ話しかけやすくなるような、あたたかな空間を作りたいと思い、絵など視覚的に楽しめるものを検討した結果「ParaCanvas(パラキャンバス)」という障がい者アートをサイネージで表示するサービスを導入しました。

障がいのある方が収入を得ることは依然として難しく、施設で働いていても法的には労働とみなされない場合があり、その結果作業への対価が十分でないケースが多くあります。加えて、金銭的な支援があれば良いというわけでもなく、自分たちが一生懸命考えたものや取り組んだものが正当に評価され、報酬として返ってくるという体験を得る機会が少ないという現状もあります。そうした中で、企業として何か貢献できないか、ずっと考えてきました。

実は2年半前にもパラキャンバスを検討し、当時は実現に至らなかったのですが、
改めてコミュニケーションしやすい空間としての価値向上と社会的意義との両面において魅力を感じ、このオフィスリニューアルのタイミングでもう一度提案しようと決めました。このサービスは30秒ごとに作品が切り替わり、さらに月ごとにラインナップも変わることで社員の関心を継続的に引きつけることができます。月初、オフィスに来た時は「今月はどんな絵だろう?」とワクワクするようになりました。

他にも、コミュニケーションを促進する仕掛けとして「社長のおごり自販機」を導入しています。これは社員2人で同時に操作しないと利用できない仕組みで、さらに同じ相手との利用には制限が設けられています。そのため、自然と他部署の社員に声をかけるきっかけが生まれ、「もう使いましたか?」といった会話が日常的に生まれるようになりました。普段業務で関わりの少ない社員同士が交流する機会を生み出すツールとして機能しています。

部署間の利用状況を集計し、他部署同士の利用を促進させる仕組みを導入。

オフィスに込めた、再設計の思想

――このオフィスを今後どのような場にしていきたいと考えていますか。

当社は合弁会社であるため、出向元に帰属意識を持つ社員も多いのですが、今回のオフィスでは事業を体現したデザインを取り入れ、モビロッツらしさを強く表現しました。そのため、まずはこの新しい世界観に触れ、当社らしさを体験してほしいという思いがあります。

当然、体験には良い面だけでなく違和感を持つ部分もあると思っています。実際に社員から「出向元の方が良い」といった意見を受けたこともあるのですが、それも含めてさまざまな会話が生まれ、より良くしていこうと議論につながっていくことに意味があると捉えています。

オフィスの良し悪しにとどまらず、モビロッツらしさとは何かを考えるきっかけとなり、価値観を広げていく。そうした役割を空間が担うことが重要だと考えています。まずはこの空間を体験してもらい、会話が生まれていくことが直近のイメージですね。

車線をイメージしたデザイン

リフレッシュスペースでは、床材としてタイヤの廃材を採用。

そして中長期的には、数ヶ月後にこの環境に慣れてきた際、コミュニケーションが当たり前に行われる状態になってほしいと考えています。現在のような新鮮さや驚きから、自然に使われる日常的な環境へと変化していくことを期待しています。

そうして当たり前の状態になると、さらに高いレベルを目指したいという意識が生まれると思うんです。人は環境に慣れると、次のステップを求めるようになるものですよね。
現在は「少し背伸びしたオフィス」と感じている社員も多いですが、空間で実現できることはまだまだ多くあると考えています。使いやすさや改善点に関する意見も含め、サステナビリティやダイバーシティといった領域にも社員一人ひとりがより意識を持てるようになることが今後の理想です。

また、今回のプロジェクトが「総務が頑張っている取り組み」と受け取られてしまった点は課題として感じています。その結果、「やらされている」という印象を持たれてしまった部分もありました。
例えば、業務への影響を避けるために現地調査を早朝に実施するなどの配慮を行い、業務時間と重ならないようにしていたのですが、その際に「朝から大変ですね」「何か手伝えることはありますか」と声をかけてくれる社員もいる一方で、「事前に連絡はなかったのか」「自分たちにどのような影響があるのか」といった反応もありました。

もちろん、こちら側の周知不足という反省もありますが、「自分たちの働く場所を、自分たちで良くしていく」というプロモーションができず、結果として、社員が受け身側でこのプロジェクトを捉えてしまったことは、今回の課題だったと感じています。

また、当社では掃除の文化もまだ十分に根付いておらず、机が汚れていてもそのままになっていることがあります。「自分が汚したわけではないが、気付いたから拭いて帰る」といった行動が自然に生まれるような文化にしていきたいと考えています。

こうした一つひとつの意識の積み重ねによって、より良いオフィスを全員でつくり上げていくことができるのではないかと思っています。
そのため今後は「みんなで創るオフィス」という意識をより強く持ち、長期的には全員で考え、一丸となってオフィスづくりを進めていける状態を目指していきたいと考えています。

モニターを通じて、エリアや拠点ごとの様子をリアルタイムで共有。

――事業の展望についても教えてください。

冒頭でもお話しした通り、単なる商用車リースの枠を超えて幅広くサービスを展開していくことを目指しています。企業理念にも「枠を超えて」と掲げている通り、トラックやリースを出発点としながらも、その先にどのような価値を提供できるのかを考え続けていきたいです。
現在は特にDXやIT領域に注力しており、商用車リース業界全体、さらにはその枠を超えた領域において、業界をリードしていく存在を目指していきたいと考えています。

また、人事総務の目線で言うと、商用車リースの業界においてダイバーシティやサステナビリティ、組織開発に強みを持つ企業として名前が挙がる会社がまだ少ないのが現状です。運送会社では徐々にそうした取り組みも見られるようになってきていますが、自動車関連の領域全体では依然として保守的な側面も多く残っています。
だからこそ、モビロッツがこの業界の中で一目置かれる存在となり、新しい価値観や取り組みを発信していける企業になりたいと考えています。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

実際にオフィスを拝見し、働きやすさを支える機能性だけでなく、彩りやデザイン、そして会社として社会に発信するメッセージまで、丁寧に織り込まれている点が印象的でした。タイヤの廃材や道路をモチーフにした意匠、障がい者アートの導入など、一つひとつの要素にモビロッツらしい想いが込められていると感じました。合弁会社ならではの背景を踏まえ、社員同士のつながりや会社への愛着を育むための工夫が随所に感じられるオフィスでした。

写真だけでは伝えきれないオフィスの様子やこだわりは、ぜひYoutubeのオフィスツアーでご覧ください!

【オフィスツアー】社員が自然と集まる理由とは?MOBILOTSのオフィスに潜入!

インタビュー・編集/志野
撮影/平井