
Vol.47 株式会社GENZ
東京都千代田区神田駿河台2-3-11 ヒューリック御茶ノ水ビル 3階
株式会社GENZは、ヒューリック御茶ノ水ビルに拠点を構え、IT業界の中でもプログラムの開発から品質管理まで事業を展開しています。業界全体の発展を見据え、地方への拠点拡大にも早くから取り組むなど、成長に合わせた組織づくりを進めてきました。
人材確保や社内の不満を作らないための給与・評価テーブルの公開への想いをはじめとし、拠点拡大における立地選定の考え方やオフィス移転のエピソードについて、代表取締役の板垣様にお話を伺いました。

CEO兼CTO 板垣 生様
ソフトウェアを“作る・守る・世に届ける”
――御社の提供されているサービスと、その特徴を教えてください。
弊社は、ソフトウェアテストやQA(Quality Assurance)の領域でサービスを提供しています。スマートフォンアプリやPC向けシステムなど、エンジニアやプログラマーが開発したものが世の中に出る前に、バグの有無や想定通りに動作するかを確認し、ユーザーが安心して使える状態に仕上げる役割を担っています。「プログラムが正しく動くかを確認し、品質を守る仕事」としての役割を果たしています。


自社とグループ会社のロゴオブジェ
また、現在6社のグループ・パートナー企業があり、ソフトウェアの“作る・守る・世に届ける”という一連のプロセスを包括的に支える体制を整えています。例えば、システムを開発する会社、リリース後の保守を担う会社、「何を作るか」を定める要件定義を専門とする会社、さらには近年需要が高まっているサイバーセキュリティ領域を扱う会社など、多様な専門性を持った企業がそろっています。ITプロダクトが世に出ていくまでの全工程を一つのグループでカバーできる点は、他社にはあまり見られない特徴だと考えています。

楽器の置かれた会議室
事業領域だけでなく、個性的なメンバーが多いのも特徴的だと捉えています。それぞれに強い専門性やこだわりを持った人材が多く在籍しており、自分の得意分野を伸び伸びと発揮できる環境が整っていると考えています。

――今回の移転に至った背景をお聞かせください。
事業拡大により、これまで使用していた拠点が手狭になってきたことが、今回の移転の大きな背景にあります。グループ会社もそれぞれ別拠点に分かれていたため、業務効率や連携の面でも「一か所に集約したほうが良い」という考えが高まりました。
弊社には、ソフトウェアの検証業務を行う「QCLab」があり、これまで事務機能やバックオフィス作業を行う本社とは別の場所に構えていましたが、こちらも十分な作業スペースを確保しにくい状況になっていました。
こうした課題を踏まえ、本社とQCLabを同じ拠点にまとめることで、スペースの拡大だけでなく、グループ全体の連携強化や作業効率、安全性の向上にもつながると判断し、お茶の水への移転とQCLabの併設を決定しました。
オフィスが最も力を発揮する場所に
――新オフィスの選定にあたって、重視した条件や“ヒューリック御茶ノ水ビル”を選ばれるまでの経緯を教えてください。
重視した条件としてはもうとにかく「広い」。
本社やグループ会社、そしてQCLabを集約するにあたって、十分なスペースを確保できる物件であることは必須条件でした。

エリアの選定においては、社内の雰囲気や事業の特性を踏まえ、いわゆる新宿や六本木といったIT企業が多く集まるエリアはあえて避けたいという想いがありました。
QCLabを四ツ谷に開設した際にも私自身エリアの選定に携わりましたが、IT企業という業態上、検証用のスマートフォンやパソコンの実機が急ぎで必要になるケースが日々発生するんです。お客様から不具合のご相談をいただいた際、手元に該当の端末があるほうが、より正確かつ迅速に対応できます。特にスマートフォンやパソコンは種類も多く、新しいバージョンも次々に登場するため、必要な端末をすぐに調達できる環境は重要視しました。
そういった面で、新宿や渋谷に比べて、秋葉原に近い四ツ谷には調達しやすい環境が整っていました。自転車で気軽に買いに行くことができ、とても便利です。オフィス内に自転車が並んでいますが、これもすべて社用車なんです。


こうした背景から、秋葉原周辺が新オフィスの候補として自然と挙がっていました。
最終的に複数の候補地を比較し、「ここが一番良いのではないか」と一致したのが現在のお茶の水です。広さという絶対条件を満たしていたことに加え、交通アクセスの良さも大きな決め手でした。新宿方面にも、秋葉原方面にも出やすく、山手線の主要エリアとのつながりも考えると、中央・総武線沿線は非常にバランスの良い立地でした。
同エリア内では他の物件も検討していましたが、内装設計における自由度の高さが決め手となり、本ビルへの入居を決めました。

――今回の移転で印象的だったエピソードを教えてください。
やはり、スマートフォンやパソコンを複数台同時に扱ってテストを行う業態のため、Wi-Fi環境には非常にこだわりました。サーバールームの設計、回線速度、どのインターネット回線を採用するかなど、通信会社と同じレベルと言っていいほど、ネットワーク設備の構築には力を入れました。
会議室の床下にも大量のLANケーブルが張り巡らされており、入居後1カ月ほどは通信環境を最適な状態に仕上げるための微調整が続きました。安定した環境を整えるまでには試行錯誤もありましたが、その分、今では非常に快適に利用できています。


メンバー全員が伸び伸びと働ける空間
――社員の皆様の働き方はいかがですか。
弊社ではフリーアドレスを採用しています。エンジニア業務といっても、実際仕事をする上で一人で黙々と作業することは少なく、4、5人ほどのチームで作業したり、テストを行ったりする場面が多くあります。そのため、席が固定されてバラバラに点在してしまうよりも、プロジェクト単位でまとまって座れる、柔軟なレイアウトの方が効率的だと考えました。

出社率は現在2割ほどで、リモートワークが中心です。固定席の場合、出社頻度が低いメンバーの席が実質的に使われないまま確保されてしまうなど、運用面での課題も想定されました。そのため、出社・不在に関わらずスムーズに使えるフリーアドレス制を導入しています。
執務室はあえて仕切りを作らず、開放感が感じられるレイアウトにしています。基本的な座席はある程度エリア分けしていますが、手前側は休憩スペース・フリースペースとなっており、気分転換をしたい時や、席では話しづらい時には、バーカウンターのスペースで作業する社員もいます。あえてこだわりを作らず、働き方や気分に合わせて自由に場所を選べる環境づくりをしています。

――御社らしさが反映された空間はどこだとお考えですか。
雰囲気という点では、まずシャンデリアや社用の自転車、そして室内に植えられた木など、一般的なオフィスにはあまりない要素が特徴的だと思います。


この木も造作で、ただ鉢植えを置くのではなく、ジオラマの要素を採用しています。植物は造花ではなく本物なので、手入れも必要ですが、専用のライトを当てて育てるなど、空間づくりにこだわっています。
オフィスがただの作業場にとどまらないよう、緑を取り入れたいという想いがあり、クリスマスツリーも飾れる空間にしたいと考えていました。
照明も大きなこだわりの一つで、元々のビルの照明から変更して、雰囲気に合うものを採用しています。窓もほとんど全面なので、昼間は日差しが入り眺めも良く、夜はガラッと雰囲気が変わるのも気に入ってるポイントです。

内装を考える際は、各グループ会社の社長がそれぞれ要望を出し合いました。たとえば、ダウンライトやシャンデリアは創業社長の希望で、私が提案したのはゲーミングチェアと個室のブースの採用です。メインの席がフリーアドレスで仕切りもない開放的なつくりだからこそ、オンライン会議や電話に使える個室スペースを4室ほど設けました。ゲーミングチェアについても、1日8時間ほど座ることを考えると、椅子にはこだわりたいという想いがあり、執務室のほとんどの席で採用しています。
また、自転車はCFOの趣味によるもので、こうした各社のこだわりをうまく組み合わせて今のオフィスに繋がっています。インテリアもこの内装に合わせて、全て新規のものを購入しているので、本当にこだわりがたくさん詰まっています。


――他にも内装のこだわりを教えてください。
そうですね。バーカウンターのエリアには実際にお酒を並べて、業務後にちょっと集まって飲めるようにしています。不定期ではありますが、社内交流の場として営業部が中心となり活用しています。

また、業務上ホワイトボードを頻繁に使うため、会議室のホワイトボードにもこだわりました。造作の壁に取り付ける都合上サイズに制限があり、適切な大きさや配置についてかなり議論を重ねました。
会議室の名前は、もともと仮で数字で呼んでいたのですが、社員の提案で白と黒を基調とした特徴から、トランプの「スペード」「ダイヤ」「ハート」「クローバー」といった名前になっています。入居当初は4部屋でしたが、利用ニーズの増加に合わせて後からフリースペースを区切り、さらに3室を追加しました。

風通しの良い組織づくり
――移転を経て、働き方やコミュニケーションに変化は感じましたか。
良い意味でも悪い意味でも、大きな変化はあまり感じていません。もともとコミュニケーションを重視する文化が根づいていたこともあり、人が増えてからもその文化は変わっていません。むしろ、それだけ元々の関係性がしっかり構築されているのだということを強く実感する機会になりました。
――そうした働き方に対して、評価の制度や研修の体制など、社員の成長支援へのこだわりや想いをお聞かせください。
評価制度としては、現在半年ごとに行っています。業務内容や部署が異なるメンバーを公平に評価するのは難しさもありますが、弊社では目に見えていない・形になっていない評価をしっかり拾い上げ、正当に評価することを大切にしたいと考えています。数字に表れる業績だけでなく、裏側で支えてくれている人や、自己主張は控えめでも不可欠な存在である人、そうしたメンバーほど悩みを抱えていても表に出さず、突然「辞めます」となるケースも少なくありません。


給与テーブルの公開についてはもちろん賛否両論ありましたが、立場上は話しづらい関係性であっても、飲みに行ったタイミングなどに「実は…」と本音を話してくれる際の後押しになっていると感じます。そこで初めて見える課題や本人の考えも多く、改善につながった例も何度もあります。こうした“見えない声”を拾い、ミスマッチを防ぐことを非常に重要視しています。
また、評価基準が明確になることで、上司としても評価の理由を説明しやすくなり、次の目標設定も行いやすくなりました。双方が納得しやすく、前向きに次のステップへ進める仕組みづくりにつながっていると感じています。
こうした取り組みが離職率の低さにも影響していると思いますし、月に4〜5名ほどのペースでリファラル採用があった時期もありました。
業界を拡げ、働く人に選択肢を
――採用についても教えてください。故郷・青森にも支店を開設していましたが、未経験者を歓迎する姿勢について教えてください。
業界的にも、我々がやっているソフトウェアテストという仕事自体が、まだ認知度が高いとはいえず、経験者の母数も非常に少ないんです。限られた人材の中だけで採用を続けていると、どうしても業界全体で人材が循環している状態になってしまい、発展につながりません。
であれば、未経験の方を積極的に採用しよう、と。未経験でも優秀な方はたくさんいますし、「手に職をつけたいけれど何から始めればいいか分からない」という方に IT がフィットする時勢もありました。そうした方々の選択肢になりつつ、業界の裾野を広げるという社会的な意義も含め、未経験者採用に力を入れています。だからこそ、社員の方には伸び伸びと能動的に働いてほしいと思っています。


また、私は青森出身ですが、地元では若い人が「働く場所がない」という理由で札幌や仙台、そして東京へ出ていく状況をずっと見てきました。私自身が学生だった頃から20年経っても変わっていなかったんです。それなら自分たちで地元に働く場をつくろうと考え、青森にオフィスを開設し、若い人を雇用させてもらっています。
地方と聞くと人件費を抑えられるイメージもあるかと思いますが、弊社では全オフィス同じ評価制度・給与テーブルを採用しています。安く人が欲しいのではなく、地元で働ける選択肢をつくりたかったのです。業務内容は同じでも、勤務地によって給与が変わると、最終的には不満につながりますから。
IT企業は知識がないと入れないイメージが漠然とあるかと思うのですが、弊社では敷居がすごく低い所から入ることができ、青森は冬になると雪の影響で移動が難しくなるため、リモートワーク可など、働きやすい条件を並べた時に、弊社のスタイルが地元・青森の方に合いやすいのではと感じています。実際にオフィスを開設してから2年半が経ち、現在35名ほどのメンバーが在籍しています。
――今後の事業内容や、オフィスをどのように活用していきたいかを教えてください。
そうですね。事業展開に関しては、ソフトウェアテストの需要は今後もますます伸びていくと考えています。そのため、採用と教育には引き続き力を入れ、組織規模を拡大していきたいと思っています。
オフィスについても、人員増加に合わせて都内・地方問わず拠点を増やす方針をとっています。現在も「集約」と「拠点拡大」の両軸で進めており、今後も事業成長に合わせて広げていきたいと考えています。
また、事業紹介などのコンテンツが増えてきたこともあり、情報を整理するために公式サイトをリニューアルしました。なかでも「メンバー紹介」のページは、どんな人がこの仕事を担っているのかを知っていただけることで、取引先とのコミュニケーションも深まり、次のお仕事につながることもあると考えています。採用面でも、入社後に上司になる人の人柄が分かることで、候補者の不安を少しでも解消できればと考えています。

――拠点を拡大していく中で、大切にされている価値観は何かございますか。
価値観は、「つまらない場所にしないこと」ですかね。
普通のオフィスをつくろうと思えばいくらでも作れますが、それでは面白くないですし、「毎日ここに来たい」と思える場所にはなりません。むしろ、ただ“働くだけのオフィス”になってしまうと、出社したい気持ちも薄れてしまうと思うんです。
だからこそどの拠点でも、ちょっと面白い、来るのが楽しみになると思ってもらえるような工夫を大切にしています。


――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
編集後記
業務の動きを見据えた空間づくりを随所に感じるオフィスで、移転に際しての一つ一つの意思決定が、日々の働きやすさにつながっていることが伝わってきました。拠点を拡大するにあたり、能力を最大限に発揮できる空間づくりと、業務への不満を生まないための制度・環境づくりの重要性を改めて実感しました。板垣様の採用に対する想いを伺い、その想いのもと社員の方々が伸び伸びと働かれている姿が印象的でした。
インタビュー・編集/志野
撮影/平井

