創造の起点となるオフィスへ アクアスターが描く“挑戦”と“安心”の職場づくり

Vol.45 株式会社アクアスター

東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア 7階

https://aqua-star.co.jp/

常に新しい表現を模索し、さまざまな企業の課題解決に貢献してきた株式会社アクアスター。広告やエンタメをはじめ、幅広い業界においてイラストやデザインのビジュアル領域とARやWebをはじめとしたデジタルコンテンツ領域を掛け合わせ、多様なコミュニケーションを設計してきました。

事業推進室 マネージャー 小西 可南子様

2024年5月、銀座松竹スクエアへと本社を移転。「創造の起点となるオフィス」を目指す今回の移転について、 その背景から今後の展望まで、事業推進室 マネージャーの小西様にお話を伺いました。

多様なビジュアル表現を生み出すアクアスター

――御社で展開されている事業について教えてください。

弊社は、創業以来「私たちは様々な表現媒体を通して、人々に夢と感動をお届けします。」を企業理念に掲げています。イラストやデザインなどのビジュアル領域とARやWebをはじめとするデジタルコンテンツ領域を掛け合わせ、企業課題の解決やブランド価値向上に取り組んでおります。
情報があふれる現代においては、人々の関心を引き、「自分ごと化」して行動につなげることが不可欠であると考えています。そのため、デジタルクリエイティブカンパニーとして、「視覚」と「体験」を活用したコミュニケーションを実現し、企業やサービスの想いと、人々の日常における”ワクワク感”を創出し、魅力的に伝えることを大切にしています。


また、業界をリードするビジュアル制作体制を強みとし、30年以上にわたり培ってきた実績とノウハウをもとに、多様なニーズに対応しています。12,000名を超えるイラストレーターのネットワークや、社内イラストレーターをはじめとする映像・Webディレクターなど多彩なクリエイターが在籍し、企画提案から制作・納品までをワンストップでご提供しています。ユーザーへ自然に情報が届くことを心掛け、多様化する時代に応える柔軟で多角的なアプローチを展開しています。

築地から銀座松竹スクエアへ

――今回のオフィス移転の経緯についてお聞かせください。

移転前は築地に拠点を構え、当時は東京本社に150名ほど在籍していました。事業拡大に伴って従業員数も増加したため、社内ではオフィスの面積を中心に手狭さを感じる場面も。
そうした中で、エリアの再開発としてビルの建て替えが正式に決まったのです。それを機に、単なる移転にとどまらず、「せっかくなら、より快適で機能的なオフィスをつくろう」という想いが社内に広がりました。新たなオフィス環境の整備が、社員のモチベーションや生産性の向上につながるという考えが、今回の移転を支える中心的な軸でした。

――移転先を決めるにあたり、どのような点を条件とされましたか。

最も重視したのは、「コミュニケーションが自然に生まれる空間づくり」です。営業と制作が日常的にやりとりを重ねることが業務の根幹にあるため、従来よりも打ち合わせの機会を増やせるよう、会議室の数や機能を拡充する必要がありました。日常会話や気軽な相談がしやすい環境をつくるためにもオフィス全体のフロア面積の拡大が必須条件となり、1フロア500坪を目安に物件を探し始めました。


オフィス探しに先立って実施した社内アンケートでは、「作業環境を整えたい」という声が多く寄せられました。特にクリエイティブ職の社員は、長時間机に向かって作業を行うため、椅子や机といった基本的な設備の充実や、ゆとりのある空間づくりが生産性に直結すると考えています。


さらに、弊社では社内外の交流イベントを定期的に開催しており、以前は外部の会場を利用するケースもありましたが、「せっかくなら社内で完結できる場を設けたい」という声も多くありました。そのため、多人数が集まれるスペースや、フレキシブルに活用できるエリアを備えることも条件の一つとしました。アンケートでは「会議室の名前をどうするか」といった細かなアイデアも寄せられ、社員の想いを積極的に反映したオフィスづくりを心掛けた点も、今回の移転の特徴です。

社内イベント ファミリーDAYの様子

展示会イベント

会議室『オリーブ』

会議室『マスタード』

――新オフィスとして銀座松竹ビルを選ばれた決め手を教えてください。旧オフィスと同じエリアというのも何かこだわりがありますか。

そうですね。候補地としては渋谷等も検討しましたが、最終的には「銀座」という選択が社内で強く支持されました。
創業当初からゆかりのある場所であり、利便性や条件だけではなく、会社のアイデンティティに結びつく場所を選ぶことを重視した結果、旧オフィスと同じエリアであることは大きなこだわりの一つです。

実は、現オフィスに決定する少し前に、同エリアで「ここは良いかもしれない」と思える物件をご提案いただき、検討の最終段階まで進んでいました。しかし、スケジュールやタイミングの都合で契約には至らず、惜しくも見送ることになったんです。ところがその直後に、現在の銀座松竹ビルをご提案いただき、条件面もぴったり合致していたため、入居を決めました。
社長自身が以前から「いつかはこのビルに本社を構えたい」と思いを抱いていたということもあり、まさに理想とタイミングが重なった瞬間でした。社内でも「これは運命的なご縁だ」と感じた社員が多く、それが最終的な決め手となっています。

多様な色が交わり、新しい表現が生まれる空間

――新オフィスに込めたコンセプトについてお聞かせください。

オフィスのコンセプトは「CANVAS(キャンバス)」です。弊社は創業以来、イラストレーションをはじめとするビジュアル表現を核に成長してきましたが、近年ではデジタル領域まで広がり、扱う分野や商材はますます多様化しています。その多様さを“色”として捉え、個々の色が混ざり合い、新しい表現を生む場所、それを象徴する言葉が「CANVAS」でした。社員の個性やスキルが重なり合い、新しい表現を生み出す。そんな想いを込めて、オフィスを創造の出発点として設計しています。

――コンセプトを体現するレイアウトやデザインのこだわりを教えてください。

オフィスの中心には、象徴的なコミュニティスペース「CANVAS」を設けました。ここを起点に人と情報が自然に行き交い、部門・役割を超えた多様な視点やスキルが交わるような空間設計を意識しています。その周囲には会議室を配置し、それぞれに色の名前を付けることで、色が混ざり合い新しい表現が生まれる“パレット”のような空間を演出しました。

CANVASには大型モニターを設置し、自社コンテンツを常時映し出して、リラックスしながら実績を眺めたり、最新情報をキャッチアップ出来たりする場としています。また、バーカウンターも併設しており、立ち話やカジュアルな打ち合わせ、イベント後の交流など多目的に活用でき、偶発的なコミュニケーションが自然に生まれるよう工夫しています。

コミュニティスペース『CANVAS』


さらに、クリエイターのロッカーには自作イラストのマグネットが貼られているなど、日常の中に作品が息づき、社員一人ひとりの創造性を感じられる環境づくりを目指しています。また、約30〜40名を収容できるセミナールームも整備しました。経営会議や全社会議、勉強会のほか、自社ソリューションやプロダクトの展示会など、様々な用途に対応できる可変仕様です。社外に向けた発信と、社内の学習や交流の両方を担う場となっています。


そして、こうした各スペースを支えているのがワンフロア構成です。企画営業やプランナー、デザイナー、イラストレーターといったクリエイティブに関わるさまざまな職種が同じ空間で働くことにより、互いの存在を常に感じながら、部門を越えた連携や相互理解が自然に生まれる環境を実現しています。

クリエイティブ部と営業部の間に位置するミーティングルーム

つながりが刺激する創造力

――実際に移転されてみて、働き方や社内の雰囲気に変化はありましたか。

移転後、まず実感したのは社員のモチベーションの大幅な向上です。「想像以上のオフィスだった」という声が多く、空間そのものが前向きな気持ちを後押ししているのを感じます。特に、CANVASに人が集まりやすくなったことで、部門横断の勉強会やプロジェクトイベントが増加し、社内イベントが頻繁に開かれるようになりました。さまざまなコミュニケーションが生まれ、社員も自発的に関わろうとしている様子が見受けられます。

業務面においても、オープンなレイアウトによって閉鎖的な仕切りがなくなり、ひとつの大きなテーブルでつながって働いているような一体感が生まれました。ちょっとした相談や気づきの共有がスムーズに行えるようになり、日々の業務の質やスピードの向上を実感しています。後輩が先輩に気軽に質問できるなど、オープンな雰囲気が自然に醸成されているのも大きな変化です。

――働きやすい環境づくりについて、どのような取り組みをされていますか。

弊社では、社員一人ひとりが安心して、自分らしく活躍できるように環境や制度を整えています。その代表的な取り組みが「MAGプロジェクト」です。当初は、女性社員がライフステージの変化に直面してもキャリアを継続できるように、という想いから始まりましたが、組織の拡大に伴い、現在は全社員を対象とした活動へと発展しています。

誰もが安心感を持って働けることを大切にしており、環境整備や制度設計における基盤となっています。オフィスとしても、カフェスペースやコミュニティエリアを広く設け、部署や世代を超えた交流が自然に生まれるよう設計しています。例えば、新卒社員と中堅社員が一緒にランチをしている姿や、大人数でも気軽に集まれる空間があることで、部署の垣根を越えた会話や情報交換の機会が増えています。

こうしたコミュニケーションは、業務に直結する情報共有だけでなく、お互いをより知ることで生まれる安心感にもつながっていると感じています。以前のオフィスでは実現しづらかった交流が、今では日常的に見られるようになりました。

社員が安心して働けるよう、福利厚生も充実。

理念を体現できる環境づくり

――御社にとってオフィスとはどのような存在ですか。

弊社にとってオフィスは「挑戦する場」であり、同時に「安心できる場」であると捉えており、それがオフィスにも反映されていると感じています。
勉強会やイベントを通じて、社員が自発的に学び、発信を行うことも一つの挑戦です。その積み重ねが、組織として大きな成長につながると考えています。同時に、そうした挑戦を支えるには、社員が長く、安心して働ける環境が欠かせません。「挑戦」と「安心」が共存することこそが、弊社にとって理想的なオフィスのあり方だと思っています。

――そうした価値観を社員に共有していくために、理念やビジョンの浸透に向けた取り組みは何かございますか。

現在、会社として理念やビジョンの浸透には特に力を入れて取り組んでいます。社員にとっての拠り所となるよう、理念や行動指針の位置づけを明確に整理し、全社員が共通の言葉として理解・共有出来るように努めています。具体的には、朝礼での共有に加え、今後は部門ごとのワークショップや社内外に向けた発信施策も展開していく予定です。

また、理念を実際の行動につなげる仕組みとして、表彰制度も設けています。社員同士で投票し合い、クレドを体現した人を評価する仕組みを通じて、振り返りや称賛の文化が社内に根付いています。理念を掲げるだけでなく、それを日々の行動に落とし込むための仕組みを整えることで、会社全体としての一体感を作り上げています。

ビジュアル表現で社会をつなぐ

――最後に、今後の事業の展望やオフィス戦略について教えてください。

弊社はこれまで、クライアントの課題解決を通じて価値を提供することに真摯に取り組んできました。もちろんその姿勢は今後も変わりませんが、これからはさらに、その先にいる人々や社会全体に対して、より広い視点から貢献していくことを重視しています。組織が拡大する中で、社会的な意義や持続的な価値提供を意識した行動や選択が、より一層重要になると考えています。

そのうえで、強みとしてきたビジュアルやデジタルの領域を基盤としつつ、例えばIPのプロデュース事業の加速や社会課題の解決、ブランド価値の浸透を促す活動など、新たな取り組みにも挑戦しています。これらをいくつかの成長の柱として据え、さらなる発展と新たな挑戦につなげていきたいと考えています。


オフィス戦略においても、今回の移転で実現した社内コミュニケーションの活性化を、今後さらに発展させることが重要だと考えています。もともと弊社には社内イベントや交流の文化がありますが、新オフィスはその機会を一層増やし、日常的な情報共有や相互理解を促す場となっています。オフィスを単なる職場ではなく、努力や苦労も共有し、支え合いながら楽しく働ける環境として捉え、社員の幸福度やパフォーマンス向上へとつなげていきます。
今ある環境をさらにスキルアップできる場へと進化させ、「挑戦」と「安心」が共存する職場づくりを推進することが、弊社のオフィス戦略であり、事業成長を支える基盤だと考えています。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

「挑戦」と「安心」が共存する職場づくりを、福利厚生やプロジェクトだけでなく、オフィスの設計からも体現されていると感じました。
フル出社の中でも、日々前向きに創造しながら働ける環境が整っており、またクリエイティブ企業ならではの、社員の声を反映した仕組みや創造を生むコミュニケーションの工夫が印象的です。

インタビュー・編集/志野
撮影/平井