自社を表現するモチーフは?社員を巻き込んだテテマーチのオフィス移転

Vol.19 テテマーチ株式会社

東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル6F・7F

https://tetemarche.co.jp/

企業のSNSマーケティング支援で成長を続けるテテマーチ株式会社。2021年11月に移転した新オフィスをご案内いただきながら、オフィス選定からデザインに至るまで、移転プロジェクトを統括された取締役の大泉様にお話を伺いました。

取締役 大泉駿太郎様

人とシステムの両軸で企業のSNSを支援

――SNSマーケティング業界での御社のポジショニングやコロナ禍でのマーケットの変化について教えてください。

弊社では、SNSのマーケティング支援の中でもとりわけInstagramとTwitterをメインに支援させていただいています。コロナ禍初期は予定していたプロモーション施策全体をストップされる企業様が増え、一時的に業績が悪化しましたが、withコロナの状況が継続することが分かってからは、オフラインのマーケティング施策ができない分、オンラインの施策への移行を検討される企業様が増えました。企業がSNSに投資してプロモーション・マーケティングを行う動きが加速しており、弊社へのお問合せも増加しています。

――御社のクライアントはどのような企業が多いですか?

弊社のお客様の大半はBtoCの事業を展開されており、商品の認知拡大やファンとのコミュニケーションを目的として取り組まれる企業様が多いです。業界としては美容やアパレル、飲料メーカーなどの消費財を持っている企業がメインクライアントです。

――支援期間はどのくらいなのでしょうか?

アカウント運用は基本的に半年間ですが、SNS上でのキャンペーン施策の企画や運営もスポットで手掛けています。Twitterでフォロー&リツイートキャンペーンをよく見かけると思いますが、弊社ではキャンペーン応募者の集計やリツイートに対してその場で抽選結果が表示される自動返信システムのツール提供も行っています。企画・システム提供・広告運用・レポーティングをパッケージで提供させていただいており、その場合は約1~2ヵ月のプロジェクトになります。弊社がアカウントの運用代行とコンサルティングを行うことで、半年から1年かけて内省化していただくこともあれば、2~3年継続してコンサルティングを提供させていただいている企業様もいらっしゃいます。

――業界内での御社の強みは何ですか?

SNSのアカウント運用代行やコンサルティングだけではなく、広告運用やクリエイティブの制作、インフルエンサーを起用した企画など、全方位的な支援ができることが強みです。
弊社では人が介在する支援事業に加えて、Twitterのキャンペーン支援ツールや「SINIS(サイニス)」というInstagramのアカウント分析ツールを自社で開発して提供するSaaS事業というもう1つの柱があります。例えば、SINISには現在約4万のビジネスアカウントが登録されており、抽出したデータから業界ごとの傾向を分析したり、どのような投稿にいいねがつきやすいのか仮説・検証が可能です。SaaS事業で得たデータを支援事業に活かしたり、支援事業のナレッジをSaaS事業のプロダクトに活かしたりと、柱となる2つの事業の相乗効果でお客様に価値を提供できることが弊社独自の強みだと捉えています。
また近年、支援事業とSaaS事業の間に「サキダチラボ」というR&D機関を立ち上げました。データを分析して、売上に貢献するにはどうすればよいか、SNS内にどのようなアルゴリズムがありそうか仮説・検証することに取り組んでいます。

――御社の皆様は現在どのような働き方をされていますか?

現在、出社とリモートを組み合わせたハイブリッドな働き方がベースとなっています。エンジニアとデザイナーはフルリモート可能、それ以外の職種は週2日までリモートワーク可能、という制度を基本としながら業務内容やチームによって柔軟に対応しています。

不動前のオフィスで急成長

――これまでのオフィスについて教えてください。

創業当時は、一緒に事業を行っていた社員100名規模のIT企業の渋谷オフィスに同居していました。同居企業の1つの事業部が子会社化され、その代表を弊社代表が兼任することになったため、一緒にオフィスを移転することになりました。渋谷に近く、賃料が抑えられるエリアで探し、不動前のオフィスに移転しました。最初は1フロアにデスクの島を5つ作り、そのうち2島は空席だったのですが、少しずつ社員が増加しもう1フロア借り増ししたため、移転前のオフィスは2フロア合計で約100坪でした。

中長期的な働き方を見据えて

――今回のご移転の経緯や理由について教えてください。

事業成長によって人員が拡大し、オフィスが手狭になったことが一番の理由ですが、もう少し山手線の駅からのアクセスをよくしたいという話も出ていました。中長期的な方針を考えた時に、弊社ではフルリモートは導入せず、出社して皆で話し合う時間を大切にしたいという結論に至りました。

――ご移転に際して、経営陣からの要望・社員の皆様からのご要望はありましたか?

新オフィスを選定する際に、ブランディングの観点からお客様に安心感を抱いていただけるよう、オフィスとしての格式やビルのグレードは重視したいという声がありました。
また、前オフィスは完全に間仕切りされた個室が1ヵ所しかありませんでしたので、社員からは1on1ミーティングや採用面接、Web商談に利用できる個室を増やしたいという意見が多かったですね。

――どのようにオフィスをお探しになられましたか?

当初は、リモートワークを増やして移転をしない、不動前のオフィスを残したまま徒歩圏内に分室を増床する、広いところに移転するという3パターンの選択肢があったため、どのように絞っていくのか決めかねました。今のオフィスも好きだし、移転するとなると皆の負担も大きくなりますので、先が見えにくい状況で果たして今移転すべきなのか、どこまで投資すべきかという点は悩みましたね。

――どのように選択肢を絞っていかれましたか?

検討した結果、入社予定者も多数決まっていたので移転しないという選択肢は一番最初になくなり、場所を広げる必要があると判断しました。前オフィス近隣の小規模オフィスも含めて10棟ほど内見しましたが、分室は移動が非効率になるのでやはり広いオフィスを探すことになりました。
エリアについては恵比寿・目黒・五反田周辺で探しました。会社の近隣に住んでいる社員には近隣住宅手当が支給されるため、移転しても既存の制度にあまり影響が出ないように配慮しました。内見したビルの中で恵比寿1件、目黒2件に候補物件が絞られましたが、不動前の前オフィスに近い目黒の2物件でどちらがよいか全社員にアンケートがとられ、大多数の票を集めたオリックス目黒ビルに決定しました。もう1物件は目黒川を超える位置にあったため、目黒駅からの距離を重視する意見が多かったですね。

目黒川を見下ろせるカウンター席

――移転プロジェクトで予想以上に大変だったことがあれば教えてください。

レイアウトを決めるのが大変でした。何名用会議室を何部屋どのように配置すればよいのか弊社では正解が見えず、施工会社の方と何度も擦り合わせしながら進めました。区画の形状や柱・空調の位置などによって制限されることが多く、一筋縄ではいかないのだなと感じました。
6F・7Fの2フロアを賃貸して執務フロアとそれ以外のスペースを分けて使うことは決まっていましたので、何席確保したいか要望を出して3パターンほどレイアウトをご提案いただきました。常時90名着席でき、もう少し人数が増えたとしてもリモートと併用したりフリーアドレスにしたりとフレキシブルに変更できるレイアウトを採用しました。

――オフィスづくりにあたって何を一番重視されましたか?

移転プロジェクトに社員を巻き込むことを重視しました。オフィス移転にあたって何か会社のモチーフを考えようという話になり、有志の社員4~5名で移転プロジェクトを立ち上げ、テテマーチらしさとは何かについて議論を重ねました。モチーフの候補には「動物園」「ミュージアム」「シアター」などもあがりましたが、プロとして何かを提供してその先にいる人を楽しませる、一緒に楽しむという点が皆の共通の価値観として見えてきたため、そのイメージを連想させる「サーカス」をモチーフにオフィスを作ろうと決めました。

――内装のこだわりポイントを教えてください。

こだわった点は大きく3つあります。1つ目はプロジェクターを使った勉強会などが開催できるスペースを想定した雛壇席です。私たちはお客様向けのセミナーや社内勉強会を積極的に開催しているため、まとまった人数が一度に集まれる場所を作りたいという考えがありました。

まるでサーカスの観客席のよう

アニマルのモチーフも随所に

2つ目は雛壇席の裏側のスペースを活用した個室ブースです。ロールスクリーンを下ろすこともでき、集中したい業務に没頭できると人気です。

雛壇席の裏側に回り込むとこんな光景が広がります

集中作業に最適な隠れ家的ブース

3つ目は会議室ゾーンです。大会議室1室、中会議室2室に加えて和室の会議室を設けました。前オフィスでは作業や仮眠ができる1名用の畳スペ-スがあり好評だったため、今回も採用しました。執務エリアと異なる環境でクリエイティブな仕事ができるのを期待しています。

靴を脱いでリラックスできる掘りごたつ式の和室

会議室ゾーンには撮影スタジオも併設

拡がる支援領域

――最後に、これからの事業の展望や挑戦していきたいことについて教えてください。

人が介在するSNS支援事業を基軸に、人が介在しなくてもより多くの人に同様のクオリティのサービスを提供できるSaaS事業にも注力していることを前述しました。もう1つの方向性としては、SNSマーケティングでのナレッジを活かして、昨年からブランドプロデュース事業もスタートしました。ブランドの新規立ち上げやリブランディングの際に、SNSでどのように見られるか、どう拡散されるかを想定したプロダクト設計が求められる世の中になってきています。また、Twitter・Instagramに加えてZ世代に支持されているTikTokに対して企業の関心がさらに高まってきています。クライアントのニーズやご相談にしっかりとお応えできるよう支援領域を拡充していきたいと考えています。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

雛壇席の裏側に隠れ家のような個室ブースがあるとは思いもしませんでした。プロフェッショナルが集中して気持ちを整える楽屋のような位置付けにも見えました。
社内で「自社らしさ」をディスカッションし、オフィスのモチーフやコンセプトを決めることできれば、今回の事例のようにデザインに一貫性が生まれ、自社のカルチャーの発信もしやすくなると思います。

インタビュー・編集/服部
撮影/平井