徹底した感染対策とクリエイターファースト 新オフィスに見るコロプラらしさとは?

Vol.16 株式会社コロプラ

東京都港区赤坂9-7-2 ミッドタウン・イースト 6F

https://colopl.co.jp/

2022年2月に恵比寿ガーデンプレイスから六本木のミッドタウン・イーストへオフィスをご移転された株式会社コロプラの新オフィスは2フロア合計で2240坪。科学的根拠に基づく徹底的な感染症対策とクリエイターファーストを掲げた新オフィスはメディアでも大きくとりあげられ話題を呼びました。社員の健康・安全と、クリエイターからの要望を優先して設計されたオフィスと、”コロプラらしさ”について、オフィス移転プロジェクトの指揮をとられた取締役CFO兼CHRO 原井様とコーポレート本部 経営管理部 部長の森様にお話を伺いました。

取締役CFO兼CHRO 原井義昭様(左) コーポレート本部 経営管理部 部長 森林太郎様(右)

エンタメ企業 コロプラの今

――コロナ禍の事業やゲーム業界の変化について教えてください。

原井:短期的に見ると、在宅時間が増えたため、ゲーム業界にとっては巣ごもり需要が堅調というプラスの面がありました。作るものが決まっていたり、リリースするだけの段階のものには影響はないと思うのですが、長期的に見ると、新しいアイディアを出したり新作の企画面では、ゲーム業界のどの企業も大きな影響を受けているように見受けられます。2021年のモバイルゲームの新作リリースは2年前の半分ほどになっていますので、影響が出てきているのだと思います。

私たちが手掛けるモバイルゲームにおいてはリリース後もユーザー様に楽しんでもらえるよう周年やコラボなどのイベントを運用していく必要があるため、既存タイトルの運用においても新作タイトルの企画においても社内コミュニケーションが欠かせません。その環境をどう整えるのかという点にこの数年、腐心してきました。

――コロナ禍で働き方はどのように変化していきましたか?

原井:一番初めの緊急事態宣言の約2ヵ月間は、日次で出社か在宅かを選べるスーパーフリーアドレス勤務制度を導入しました。その緊急事態宣言があけてからは、現行のフレキシブルワークスタイル制度を取り入れ、月単位で全体の出社率を定めて、各本部で「〇〇さんは今月は出社」「〇〇さんは今月在宅」というように1ヵ月単位で振り分けています。全社で4割出社と定めた場合でも、例えばエンジニアは2割出社、バックオフィスは6割出社など職種の特性に応じて比率は異なります。

森:加えて、「この業務があるから出社したい」「家族が濃厚接触者になったため在宅勤務をしたい」等の個別の要望には本部長に申請して許可してもらっています。

――コロナ禍でゲーム業界や御社の採用には変化がありましたか?

原井:エンジニアやデザイナーは在宅で働ける要素が強い傾向にあるので、ゲーム業界の中でも働き方の柔軟性を認めている企業は採用の魅力付けになっていると感じます。
弊社は感染症対策のために週何日出社というスタイルではなく1ヵ月単位でまとめて出社か在宅かを決めており、これからもう少しフレキシブルにできないか議論をすすめている最中です。
加えて、弊社ではパラアスリートの採用を行っており、コロナ前は月1回は出社していただいていたのですが、現在は競技活動を続けながらオンラインでの面談や月1回の活動報告をしてもらっています。そのため、普段香川県や福岡県など地元で練習している選手たちも採用できるようになりました。このように一部では場所にとらわれない採用もできるようになってきています。
また、コロナ禍を機にこれまでの新卒一括採用をやめて、通年採用に切り替えました。留学されていて9月に卒業する方や卒業後数年経過された方も採用できるようになりましたね。

6Fメインエントランス

エントランスではコーポレートキャラクターの大きなクマがお出迎え

コロプラ水と称したお水は全部で12種類 季節によってデザインも少しずつ変わるそう

――コロナ禍でコミュニケーションがとりにくくなった分、工夫されていることや新たにはじまった取り組みはありますか?

森:出社メンバーと在宅メンバーのコミュニケーションはGoogle Meet Hardware Kitを導入したことで非常に円滑になりました。Google カレンダーと同期中の会議にワンタップで参加できますのでとても手軽です。

森:また、前オフィスで5ヵ所設置していた1~2名用の個室ブースを新オフィスでは約40席に増やしました。弊社では社員同士の1on1を頻繁に行うため、皆がよく利用しています。

オフィスの床材は抗ウイルス天然素材のリノリウムを採用

対面でも安全に1on1が可能な個室ブース

原井:また、集まって朝礼ができなくなったので役員が動画を撮って1~2週間ごとに交代でアップするようになりました。伝えたいことを自撮りして、コロチューブと称した社内ツールに投稿するのですが、集まって朝礼していた時よりもきちんとメンバーに伝わっているように思います。また、移転前には新オフィスのイメージをもってもらえるように様々な工夫をしました。全社キックオフでは入居工事前の新オフィスの紹介動画で広さを伝えるためのクイズを出題したり、社内ツールを通じて六本木周辺のグルメスポットを紹介したりと、定期的に新オフィスの状況を伝えていくことで楽しみながら社員を巻き込んでいきました。

――チームで行うゲーム開発では、具体的に特にどのような業務において出社が必要ですか?

原井:リードと呼ばれる、色々なチームのメンバーの意見を擦り合わせるような業務と、アイディアを出したり企画を行う業務などは出社した方が効率的ですね。

健康経営とクリエイターファーストの視点

――今回のご移転の背景や社員の皆様から新オフィスへのご要望について教えてください。

森:コミュニケーションをよりとりやすくしたいという経営層の想いが中心にあったのですが、一方で前オフィスはエンタメの要素が強かったため、より実用的な要素もたくさん盛り込んでほしいという現場からの声もありました。ヒアリングしていく中で、モーションデザイナーという職種のメンバーからは、ゲーム内のキャラクターの動きをリアルに作るために自分たちが鏡を見ながら体を動かしたいというニーズが出てきたため、大きな鏡を設置した会議室を設けることになりました。
また、前オフィスは全体的にカラフルなデザインでしたが、絵を描くデザイナーたちからは視界の中になるべく色が少ない方が助かるという声があがり、モノトーンや落ち着いた色合いのオフィスデザインをデザイン会社に依頼しました。調整を重ねる中で、白黒がはっきりしすぎるのも目がチカチカするという意見もあったので、結果的には白と木目調を中心とした丸みを帯びたデザインでまとまりました。新オフィスはクリエイターファーストの視点で実用性を重視して設計をすすめていきました。

執務エリアの脇には立ちミーティングスペース

ホワイトを基調に、丸みを帯びたデザインが各所に

コロプラのヒストリーを来客用会議室の通路に展示

――オフィス移転に際してどのように社員の皆様から意見を集められたのでしょうか?

森:全員にアンケートをとると様々な意見が出過ぎて、かえってまとまらないという経験則がありましたので、本部長・部長に依頼をして、ヒアリング予定のメンバーをベテランから新卒数年目までバランスよく選んでもらい、各職種ごとに総務からヒアリングを行いました。全社で1,000人弱の会社ですが、計10回ほどのヒアリングで延べ50~60人のメンバーに職種代表として意見を出してもらいました。

――1.7億円を投じてトコトン感染症対策にこだわった背景について教えてください。

原井:前述したとおり、ゲーム業界の特性として既存タイトルも新作もコミュニケーションが重要なので、基本は出社してゲームを開発したいという想いが一番にありました。それに加えて、もともと弊社は健康経営に取り組んできており、ラジオ体操の実施、疲れにくいチェアの導入、リラクゼーションの施術がうけられるKuma SPAなど様々な取り組みを実施してきました。クリエイターの中には、ゲーム開発に没頭して、健康への視点がおろそかになるメンバーもいるため、クリエイターが安心して思いっきり働ける環境を追究した結果、このような施策が増えてきました。今回の徹底した感染症対策も健康経営の文脈の1つなので全く違和感なく取り組めました。

コロパーク内で、牛丼や冷凍パスタなどの購入が可能

福利厚生として置いているバナナはβ運用中で自由に食べてOK 社員の健康を食の面からもサポート

人気のKuma SPAは取材中も施術の予約がはいっていました

森:私たちが移転先の意思決定をしたのが2020年12月頃だったのですが、まだこれからコロナウイルスの感染状況がどうなっていくのか予測できないタイミングにおいてミッドタウンに移転することと感染症対策を徹底したオフィスにしようということを短期間で意思決定できたのは、業界の他企業を気にすることなく経営層が自分たち独自で判断したことが大きかったと思います。横を見ていたらできない判断だったと思います。

ダクトを増強して換気量を確保するとともに調湿機能も強化

パナソニック社の「エアリーソリューション」を企業で初導入 下方気流で浮遊する飛沫を床に落とし、毎分12,000ℓの空気を浄化

ポータブル手洗いスタンドWOSHを導入

WOSHでは手洗い中にスマホの除菌も可能!

手を使わずひじで開閉することができるドアノブ

――今回のご移転プロジェクトはどのような部署のメンバーで構成されていますか?

森:移転のプロジェクトチームは原井が責任者で、私がプロジェクトリーダー、総務スタッフ6名と情報システムスタッフ数名がコアメンバーでしたが、それぞれのフェーズでたくさんのメンバーが関与してくれました。移転が近づくと各部署から引越しリーダーを選んでもらい30~40名が関わってくれましたし、来客用会議室には新卒3年目の若手デザイナーに部屋の名前をテーマに絵を描いてもらい飾るという企画を前オフィスから継承して行いました。
業務時間を使って移転に関与してくれたメンバーは100名近くにのぼると思います。

来客用会議室の名前は「コロニーな生活」のアイテム名から/部屋の名前にちなんだ社内デザイナーの作品を展示

キャラクターグッズやパラアスリートのユニフォームなどを展示している会議室

 

オフィスに見るコロプラらしさ

――前オフィスと新オフィスのレイアウトやゾーニングの共通点や異なる点について教えてください。

森:共通点としては、立ちミーティングの文化は今回のオフィスにも継承しています。メンバーが集まるコロパークというスペースも、経営層と話し合いを重ね、今回も継承しました。異なる点では、1フロアの面積が広くなったため感染症対策がとりやすくなったこと、また会議室の考え方が大きく見直されました。大人数用の広めの会議室は数を減らし、1on1やオンライン会議などに柔軟に使える個室ブースを大量に確保しました。

立ちミーティング用のテーブルはホワイトボードを兼ねています

――新オフィスで自社のカルチャーやコロプラらしさがあらわれていると感じるところはどこですか?

原井:私はコロパークだと思います。新作のリリース前にはβ版をプレイしてレビューしながらコミュニケーションをとることができ、皆の発表の場としても活用されています。コロナ禍においてコロパークは本当に必要かという議論をしたのですが、ゲーム開発にとっては非常に重要なスペースだという意見が多く、オフィス移転を通して改めて弊社の働きやすさとは何かを考えるきっかけになりました。

5Fのコロパークはリフレッシュやコミュニケーションの場

オープンミーティングスペース

レトロゲームから最新ゲーム機が揃ったゲームコーナーではリリース前のタイトルのβ版をプレイすることも

広々としたゲームコーナーがもう1ヵ所

クマ図書館では専門書から雑誌・漫画まで全て貸出可能 在宅勤務中でも予約して取り寄せられるそう

――森さんはどんなところにコロプラらしさを感じられますか?

森:弊社では「ちょっといいですか?」とメンバーに聞きにいくフラットな文化があって、立ちミーティングのスペースに移動してホワイトボードに書きながら話したりすることが頻繁にあることがコロプラらしいと思います。また、メンバーに話しかけにいく時に、座席付近のごみ箱に腰かけて話しかけてくる人が多いのが特徴です(笑)。入社当初は、自分より上の役職の方が「森さんちょっといいですか」とごみ箱に座りながら話しかけてくるので驚きました。
過去に各座席のごみ箱をなくそうという話があったのですが、これぞうちの文化だというくらい反対する人が多かったですね。それであれば座ることを前提としたごみ箱を探そうということになり、今回総務で様々なごみ箱を比較検討した結果、無印良品様のごみ箱に行きつきました。

座り比べた結果、採用されたごみ箱がこちら

ごみ箱に座りながらコミュニケーションをとるユニークな文化がある

――大規模なオフィス移転ならでは、もしくは上場企業ならではの移転プロジェクトの大変さについて教えてください。

森:今回の移転は、弊社の過去を振り返っても経験が無い規模であり、プロジェクトチーム内での移転ノウハウもほとんど無い状況からのスタートでした。不動産会社とどのように交渉すればよいのか、移転先がきまった後、PM会社やデザイン会社はどのように決めていけばよいのかなど1つずつ越えなければならない壁がありました。その中でも特に大変だったことはエビデンスに基づいた感染症対策をどのように実施するかという点と、社員1,000名規模の引越しを土日の2日間でどのようにスムーズに行うのかという点です。結果的にPM会社には、感染症対策にご協力いただいたパナソニック様もご紹介いただき、本当にお世話になりました。弊社は最初から100%の事を決めずに、その場その場でディスカッションしながら決めていく会社なので、途中で変更も多くて大変だったと思います。最後まで付き合っていただき、感謝しかありません。
原井:上場企業という面では、株主様の目線もあるので、しっかりと予算を組み、その予算内におさめること、感染症対策にはお金をかけるとはいえそれ以外の部分には過度には費用をかけすぎないことを重視しました。どうすれば予算内におさまるか、プロジェクトメンバーが協力会社に相談しながら皆で知恵を絞りました。スケジュールもなるべくコストが最低限になるように組んでいたので、移転の前日まで工事をしており、出来立てほやほやのオフィスに無事移転できてよかったです。

――それは大きな達成感ですね。

森:よくこの短期間で移転できたなと思います。移転した後も何らかのバグは出てくるのでいま少しずつ解決している最中です。開発の後には運用が始まるゲームと同じく、オフィス移転後も運用が待っています。
原井:今回のプロジェクトを通して、デザイン会社、大手デベロッパーや不動産会社など、様々な方と協力関係を築くことができました。将来的にまた移転することになっても活かせるようなノウハウやリレーションが築けたと感じています。

ビジョンを体現した次世代オフィス

――今後の事業やオフィス戦略の展望があれば教えてください。

原井:オフィスが弊社の文化を表していると思いますので、これから採用していく方にはぜひオフィスをご覧いただき、弊社の考え方や文化を感じてもらえればと思っています。
また、弊社では「最新のテクノロジーと、独創的なアイディアで”新しい体験”を届ける」というビジョンを掲げ、最先端の技術に投資をしています。だからこそ、オフィスも今の時代にあった最先端の働き方ができる場所になるよう、これからも一歩先を見据えてオフィス戦略を考えていきたいと思います。

森:総務としては移転してからが勝負だと思っています。私たちは良いオフィスを作れたという自負はありますが、オフィスのユーザーである既存社員や未来の仲間の目線に立ってアップデートし続けたいと思います。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

編集後記

コロプラ様の社名の由来となっているゲームタイトル「コロニーな生活☆PLUS」に出てくる生き物やアイテムの名前が会議室名として使われていたり、創業初期のコロプラサーバーがエントランスに展示されていたりと、ファンにはたまらない仕掛けと既存タイトルへの愛がたくさん詰まったオフィスでした。
国内オフィスでの大規模なリノリウムの床材利用(6,000㎡以上)はコロプラが初だったり、「エアリーソリューション」の初めての導入企業となるなど、新しい体験を届けるエンタ―テインメントのリーディングカンパニーとして、新たな試みを恐れない企業姿勢が、新オフィスにも随所に見られました。
コロプラファンの皆様や、将来コロプラで働きたい方にもぜひご覧いただきたいオフィスです。

インタビュー・編集/服部
撮影/西崎