オフィス移転にあわせてセクションごとの要望をキャッチアップ 株式会社LegalForce

Vol.10 株式会社LegalForce

東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント6階
https://www.legalforce.co.jp/

 

 

 

株式会社LegalForceは、最新テクノロジーと法務の知見を組み合わせ、AIによる契約書リーガルチェックのプラットフォームを提供されています。2021年5月にご移転された同社の新オフィスは、法律事務所ZeLoとの同居で約1,500坪。コロナ禍での働き方やオフィスに求めるものの変化、各セクションからの要望をオフィスにどのように反映されていったのか、オフィス移転プロジェクトをご担当された副島司様にお話を伺いました。

株式会社LegalForce 総務/採用/人事/労務 副島司様

ミッションは「すべての契約リスクを制御可能にする」

――AIを活用した契約リスクを軽減する貴社の事業は、コロナ禍で何か影響を受けましたか?

結論から申し上げますと、業績は順調に推移しています。新型コロナウイルス感染症の流行が追い風になったのか、足枷になったのか判断が難しいのですが、コロナ禍で投資判断に慎重になる企業様があるにも関わらず、弊社の事業は成長しています。

――御社のAI契約審査プラットフォームを導入されている企業について規模や業種の特徴はありますか?

様々な企業に導入いただいており、業種業態に大きな偏りはありません。上場企業や大企業の利用割合は多いですが、毎月の契約書のチェック件数が一定数ある企業様からのニーズが強いです。

――コロナ禍で、働き方の変化があればお聞かせください。

以前から出社と在宅を組み合わせた働き方は多少ありましたが、コロナ以降は在宅勤務が大きく増えました。弊社では、営業、エンジニア、管理部などセクションという単位ごとに裁量が与えられており、週何日出社するかは部署ごとに柔軟に対応しています。コロナ禍でも緊急事態宣言が発令されている期間や少し落ち着いてきたかなと思われる期間がありましたが、その山や谷にあわせて出社をコントロールしていました。

――新オフィスはどのくらいの出社率や利用方法を想定されて探されましたか?

コロナありきでのオフィス移転でしたのでフル出社は難しいと考えており、セクションごとに考え方も異なりますが、平均で4割程度の出社率を想定していました。

――今回、400坪から1,500坪(LegalForce専有部分は1,200坪)へご移転されましたが4割出社想定で3倍以上の面積へのご移転となるとかなりの拡大移転になりますね。

そうですね。事業拡大を見据えて、人員がいつまでにどれだけ入社するか、その人数の座席数確保にはどのくらいのオフィス面積が必要かを算出しました。また、前オフィスのNTT日比谷ビルが手狭になってきていましたので、従業員のストレスを考慮した時に余裕のあるオフィスが良いという事も大きな軸としてありました。安全性確保、ソーシャルディスタンスのためというのも副次的な目的としてあります。

――現在新オフィスは何名で利用されていますか?

2021年6月1日現在で222名ですが、毎月20~30名前後増える予定で、年内には400名弱の規模になりそうです。

固定席採用のワケ

――新オフィスでは固定席とフリーアドレスどちらを採用されましたか?

弊社では固定席を採用しています。それぞれメリットとデメリットがあると思いますが、フリーアドレスはもしコロナの感染者が出た場合に濃厚接触者の追跡が難しい等の課題があると考えています。また、外出する営業担当者が多く常時社内にいる人数が少なければフリーアドレス化して座席数を削減するメリットがあるかもしれませんが、現在、営業担当者はオンライン商談がほとんどであるため、少ない座席数を相互に使用する必要は感じませんでした。加えて、社員のオフィス滞在時間が延びたことで、所有物を自席に置いて快適に就業したい社員も多いため、就業しやすい環境を整えることを重視し、弊社には固定席が合うと判断しました。

施工費の大幅削減がオフィス選定の決め手に

――今回のご移転の背景や経緯について教えてください。

前オフィスのNTT日比谷ビルには2019年7月に入居したのですが、もともと建て替え予定があるビルだったため次回移転を見越してコストを抑えて入居した経緯があります。スタートアップの企業は基本的に人員が短期間で増加する傾向にあるので、同じオフィスに長期間入居し続けることがあまりないのですが、弊社の場合は特にそのスピードが速かったため、2年経たずに今回のオフィス移転を迎えました。

――新オフィスに求めた条件を教えてください。

複数のフロアに分かれず1フロアで借りる事ができる、当時の採用計画に対応可能な面積が確保できる、坪単価の3つを重視して探しました。法律事務所が多く集積する霞が関周辺や山手線の内側も検討しましたが、都心のオフィスビルだと大きくても1フロア800坪くらいで2~3フロアに分かれてしまう物件が多かったため、湾岸エリア・再開発エリアにも目を向けることになりました。
賃貸オフィスはタイミング次第で空室状況や条件も変わります。希望どおりの入居時期やフリーレントのご相談が難しいこともありますが、コロナ禍で、私たちが求める面積帯のビルはなかなか入居者が決まらず苦戦されている貸主様が多かった様に思います。ですので思い切った条件でのご相談がしやすかったのが時期的にはチャンスでした。実際に1人で訪れた物件も多く、様々なグレードのビルを内見させていただきました。物件の資料自体も100件以上見たと思います。

――現オフィスを契約される決め手となったポイントを教えてください。

賃料等の要件を満たし、1フロアで1,500坪確保できた点はやはり大きかったですね。今回の移転は面積が大きかったので、一番費用が膨らむのは入居時の施工費かなと考えていました。前オフィスの坪あたりの施工費などを参考にすると、0から内装工事をすれば30~50万/坪、総額数億円の施工費がかかると予想されました。豊洲フロントはたまたま前入居者様の退去時期だったため、電源・空調などのインフラ関連をそのまま引き継いで入居できる可能性があったのは大きな決め手となりました。電源・空調を大きく変更せずに活かしながらLegalForceの色を出していけそうだなと思いました。

セクションごとに異なる課題

――オフィス移転プロジェクトをご担当されて副島様が印象に残っていることや大変だったことはありますか?

弊社の代表が副代表を務める法律事務所ZeLoとオフィスが同じフロアで隣接しており、前オフィスでは2社で約400坪を使用していました。新オフィスは1フロア約1,500坪あるのですが、そのうち約300坪は法律事務所ZeLoが使用し、残りの約1,200坪を弊社が使用しています。両社で使用面積や共有するスペースに求めるものが異なるため、そのすり合わせはとても大変でしたがやりがいがあるものでした。

オフィスエントランスはZeLoと共有

――たしかに、同居申請に加えてレイアウト・デザイン・工事すべてにおいて自社だけのオフィス移転より複雑で、ご担当者様の業務量も増えますよね。他にも大変だったことはありますか?

営業担当者の要望を汲み取りながらWeb会議における課題をどう解決するかという点に知恵を絞りました。Web会議中、先方の声が聞こえづらいため自分の声もおのずと大きくなってしまい、周りにいる営業担当者もまた聞こえづらくて大きな声で会話する、という悪循環が発生していたため、前オフィスでは外付け空調を取り付けてWeb会議用の個室を6ヶ所施工することで問題を緩和していました。今回のオフィス移転に際して営業側から人数分の個室がほしいとの要望がありましたが、人数分の個別ブースを作るにはスペースもとりますし、コストも最低15~20万円はかかるため、今後営業人数が増えるたびにブースを増設するには限界があります。また、オフィスに出社する一番のメリットはコミュニケーションがとれることであり、1日中営業担当者が個室にこもりきってしまったら自宅と何も変わりません。営業側にどのように納得してもらい、なおかつ快適に業務してもらうか折り合いをつけるのに腐心しました。
この課題を解決するために、サウンドマスキングやドレープも各社のショールームで試したり、コールセンターの見学にも行きました。コールセンターでは隣り合う席で防音もなしに話していても案外静かなんです。その理由はヘッドセットの性能ありきだということが分かりました。当初、営業メンバーはヘッドセットを変更するだけでは解決できるはずがないと懐疑的でしたが、実際に実物を試してもらったところ、近くでWeb会議をしていても全く気にならないし、会議が快適になると納得してもらうことができました。性能とコストのバランスの取れたヘッドセットを人数分支給することで、営業全員の個室を作ることは回避することができました。新オフィスでは、施工で解決するのではなく、ソーシャルディスタンスをとりながらヘッドセットを採用するというオペレーションの変更によってWeb会議の課題を解決しました。営業1名ずつに個室は作りませんでしたが、営業複数名でWeb会議に参加することもあれば会議室で新入社員にレクチャーすることもありますので、新オフィスには全社員が利用できる様々な大きさの会議室を全部で30ヶ所用意しています。

――営業以外のセクションからの要望はありましたか?

エンジニアはリモートで働きたい方と出社したい方がそれぞれいて、出社している者同士の会議の中に1~2名在宅のメンバーが混じるケースがあります。このようなアナログとオンラインの人がクロスするような会議では、会議冒頭の5分くらいは接続状況にストレスを感じていたり、コミュニケーションが非常に取りづらいという声がありました。そこで新オフィスの会議室にはJabra社のラウンドスピーカーを全会議室に1つずつ配置し、パソコンのマイクに左右されず全員の声がオンラインでもきれいに聞こえ、コミュニケーションがとりやすくなりました。

ビルが近接しておらず湾岸エリアならではの開放感

また、前オフィスのデスクが全てスタンディングデスクだったこともあり、立って仕事をしたいとの要望が一定数ありました。新オフィスの固定席はスタンディングデスクではないため、窓側のスペースには昇降式タイプのデスクを揃え、立って仕事をしたい人や気分転換をしたい人が自由に利用できるようにしました。

目指したのは「出社してよかった」と思えるオフィス

――レイアウトや内装でこだわった点・工夫されたポイントを教えてください。

居抜きということもあり、部分的に残していただく内装もあったため、その部分とのデザインのギャップがあまり出ないように施工会社様にご提案いただきました。コロナ禍のこんな時期だからこそ、オフィスに出社するからには「出社してよかった」と従業員に感じてもらえるオフィスにしたいと考えていました。

芝生のようなテキスタイルのコミュニケーションエリア 靴を脱いでリラックス

また、マーケティングや広報のセクションからは、社員同士やお客様と写真撮影をする際に社名のロゴがはいったスポットがいくつかあるとありがたい、という要望がありましたので、新オフィスにはフォトスポットとして使えるスペースをいくつか設けたり、LegalForceのコーポレートカラーのグレーやホワイトを意匠として取り入れています。オフィスが華美すぎてご来社いただくお客様や弊社の求人にご応募いただく方々をびっくりさせることは避けたいので、地に足のついた企業であることをイメージしていただけるようなデザインをお願いしました。

――各セクションからの要望が反映された新オフィスについて詳しくお聞かせいただきありがとうございました。最後に、今後の事業の展望についてお聞かせください。

今までは契約書のチェックは企業の法務担当が目視して経験と知識で行っていましたが、今後AIを使った契約書チェックはスタンダートになっていき、逆戻りすることはないと思います。契約書業務において、一貫して様々なソリューションの提供により、企業がそれぞれ抱える契約リスクの制御に貢献していきたいと思います。

 

編集後記

ワークスタイルの変化によってオフィスの課題や社員の要望も大きく変化しています。企業によって、環境も組織も風土も異なりますので、オフィスの課題やその解決方法も多種多様です。オフィス移転は、日々社員が感じているストレスや企業の課題を解決するにはもってこいのタイミングです。各部署からの要望を洗い出し、内装工事で解決するのか、新しいツールの導入で解決するのか、はたまた社内のオペレーション変更で解決するのか、ぜひ他の企業の事例を参考に自社にあった方法を検討していただければ幸いです。

インタビュー・編集/服部
撮影/平井