エンジニアの生産性を高める技術部門のニューノーマルオフィス「KDDIエボルバ」

Vol.8 株式会社KDDIエボルバ

東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル23F

https://www.k-evolva.com/

株式会社KDDIエボルバ様は、BPO(※)やコンタクトセンター(コールセンター)事業を中心に事業を展開されており、最新技術やサービスの提供、ツール・システムの開発によってクライアント企業の業務効率化とその先にいるお客さまへの顧客体験価値提供を支援されています。今回ご案内いただいたのは、西新宿のエステック情報ビルに増床された同社の技術統括本部の新オフィス。エンジニア集団ならではの視点を取り入れたオフィス作りや、今後のオフィスの在り方についてプロジェクトを担当されたサービス開発本部 事業統括部 部長 遠藤様と、働く社員を代表して同部署の藤田様にお話を伺いました。

※BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)…企業活動における業務プロセスの一部を専門業者に外部委託すること。

サービス開発本部 事業統括部 部長 遠藤 淳様

サービス開発本部 事業統括部 統括G 藤田 理恵様

 

在宅と出社が混在するコロナ禍の働き方

――コロナ禍で御社やクライアント企業様の事業にはどのような変化がありましたか?

遠藤:三密回避策・感染予防策として業務縮小等を講じる必要はありましたが、売上はコロナ禍の影響を受けずに堅調に推移しています。クライアント企業様ではテレワークや在宅コールセンター等の新しい働き方の推進、BCP強化を目的に、コンタクトセンター業務のアウトソース・分散化、自動化が加速しています。弊社がパートナー様と一緒に、クライアント企業様のコンタクトセンターに、AIチャットボットなどの製品デジタルチャネルの導入支援や運用をお手伝いしたり、各種システムの実装・運用サポートなどに必要な開発を担当することも増えてきています。

――コロナ禍で社員の皆様の働き方はどのような変化がありましたか?

遠藤:もともとリモートワーク環境は一部導入済みでしたが、2020年4月の緊急事態宣言以降、スピードや生産性、セキュリティ面を考慮した全社的なリモート環境の社内構築を情報システム部門が急ピッチで進めることになりました。セールス部門では、遠隔・リモートでの提案がベースになり、展示会などの多くのリアルイベントがウェビナー開催に切り替わったことで、エンジニア登壇の機会も増えました。

遠藤:私たち技術部門のエンジニアは物理的な作業が発生するため、安全対策をとって出社というケースもありますが、基本的にはシフトを組んで、在宅と出社の割合を調整しています。技術統括本部全体では、リモートワーク率は現在40~50%になっており、今後も継続する予定です。

――藤田様はコロナ禍でどのような働き方をされていますか?

藤田:コロナ禍では、密にならないようにシフトが組まれ、それに準じて出勤していました。出勤が必要な人と、それをサポートする部門の人が同じ日に出勤というような形でシフトが組まれ、あとは特別な打ち合わせが有る時など必要に応じて出社というスタイルです。自宅は集中業務に向いていますし、出社は、色々な方と気軽にコミュニケーションがとれるので、それぞれの良さがあります。

遠藤:コールセンターにおいては多数のスタッフが勤務している特性上、特に三密対策の徹底には細心の注意を払い、社員の安全・安心の確保と、事業の継続に注力しています。部門によってオンライン・オフラインの濃淡はありますが、リモート可能な部門は、徹底的にリモート化しています。例えば、私たちサービス開発部門では、どれだけ出社率を抑えられるか去年から継続して取り組み、最高で90%ほどリモートワークになりました。

――御社は西新宿エリアだけでも複数のビルにオフィスを構えておられますが、部門や使用方法はどのように切り分けをされていますか?

遠藤:本社機能、クライアント企業様業務の運用機能、BPO・コンタクトセンター機能など、様々な機能がありますので、業務内容やスタッフの働き方にあわせてオフィス環境やセキュリティを整備しています。エステック情報ビルの新オフィスに在籍する技術統括本部は、情報システム部門、サービス開発部門、システム開発部門の3つの組織で成り立っています。

――今回の新オフィスはどのような経緯で開設されましたか?

遠藤:もともと3つの技術部門(情報システム部門・サービス開発部門・システム開発部門)が異なるオフィスビルにあり、それらを1カ所に統合したいというところから新オフィスの構想が始まりました。コロナ禍以前からオフィスを探していましたが、当時は近隣オフィスの空室が少なく、本社と隣接し、広さも十分にとれるオフィスがなかなか見つかりませんでした。しかし、コロナ禍で空室が少しずつ増えてきて、すでに借りていたエステック情報ビルの別フロアに約100坪(300㎡)の空室がでるというお話をいただき、増床する運びとなりました。新オフィスのコンセプトや内装を検討するプロジェクトは2020年9月頃に立ち上がりました。

社内のICTプロダクト展示会から生まれたキャラクターが受付でお出迎え

 

3つの技術部門をSYNC UP

――どのような部門の方が新オフィスのプロジェクトには参加されましたか?

遠藤:技術統括本部の統括本部長を筆頭に、我々プロジェクトメンバーと、総務・購買部門が一緒にプロジェクトを進めていきました。オフィスコンセプトは経営層と擦り合わせないといけないですし、働き方やどう使うと効率がよいかは実際オフィスを利用する現場の社員から意見を吸い上げないといけません。会社と働く社員、両者それぞれの想いを汲み取って、“使えるオフィス”へ反映していくのが大変でした。

――新オフィスのコンセプトについてお聞かせいただけますか?

遠藤:これまで別々のオフィスだった3つの技術部門が今回1つにまとまるということでコンセプトを“SYNC UP”に決めました。(合わせる・同期する・意見をすりあわせるなどの意味で使われます。)企業ビジョン、チームビルディング、デジタル技術、顧客価値それぞれにSYNC UPするにはどのようなオフィスが必要か、シーンを描きながら計画を進めていきました。

 

遠藤:将来を見据えるとオフィス出社とリモートワークを融合した働き方は続いていきますので、コミュニケーションの取り方や、オンラインとオフラインが混在した状態での働き方・効率化をどう進めていくかという点が重要になってきます。感染対策、セキュリティエリアの確立、障害・トラブル時に迅速に対応できる環境・体制づくりといった様々な課題を解決できるようオフィスの設計を進めていきました。

ミーティングにもブレストにも休憩にも利用可能なコラボレーションエリア

――コンセプトをどのように実際のオフィスづくりに反映されましたか?

遠藤:リモートでも仕事ができる時代に出社する意味が何かということを各部門の部長層と話し合いました。せっかくオフィスに出社するからには、色々な部門の人と接点をもてること、リモートでは解決できないことを解決できるようにということを意識して、コラボレーションが促進される仕掛けを随所に取り入れました。

 

エンジニアの生産性を高める工夫

――技術部門のオフィスならではのこだわりについて教えてください。

遠藤:執務室はフリーアドレスにしており、全席にモニターを設置しています。エンジニアが快適に仕事できるように、機能的なオフィスチェアや昇降式デスクにはこだわりました。

モニターは女性の力でも簡単に高さを調整可能

健康にも配慮した昇降式デスクゾーン

 

遠藤:クライアント企業様に提供している当社システムの作業は、限られた社員しか入室できない個室で行うことにしており、静脈認証を採用しています。また、隣のシステムの監視室は、障害発生時には緊急会議を開けるスペースになっており、監視室の画面を執務エリアのモニターにも映すことができます。隣で商用環境の作業を行っているので、状況把握・検討・対応が一連の流れで行えるようにしています。今回、会議室にはプロジェクターを設置せず、すべて大型モニターを採用しました。プロジェクターは部屋を暗くしないといけませんが、モニターだと電気を消したり、ブラインドを下ろさずにに利用できますし、なにより見やすいです。

緊急会議も開けるシステム監視室。障害が発生していない普段は会議室として利用。

――社員の方からの要望は何かだされましたか?

藤田:オフィス什器や、レイアウトなどについて、どちらのデザイン・色がよいか、どちらが効率がよく働けるかといった意見をよく拾い上げていただきました。

――当分、現在の働き方は続きそうですか?

遠藤:そうですね。この新オフィスも、単なるコロナ対応ではなく、コロナ後のニューノーマルな働き方に焦点をあてているので、平均在宅率40%を想定した座席数・配置にしています。このくらいふりきって考えないと、ニューノーマルなオフィスの実現は難しい気がします。自分の固定席があるとどうしても自席にこだわる人もでてきますし、どれだけフリーアドレス化できるか、その前段階としてどこまでリモートワークができるかということを部門として対応してきました。

――新オフィスで固定席がある方はどのくらいいらっしゃいますか?

遠藤:役職者の方だけ、相談しやすいように固定席にして、それ以外の方は全員フリーアドレスにしています。個人ロッカーは全員分用意しており、その中でパソコンを充電できるようにコンセントとネットワークは引き込んであります。出社したら、ロッカーから自分のノートパソコンを取り出して、各自好きな座席で仕事をしています。

ロッカー内には充電用コンセントとLANを完備。 棚をいれたりデコレーションしたりマグネットをつけたりと各自が工夫しているそう。

 

――新オフィスの中で、藤田様のお気に入りの場所はどこですか?

藤田:壁際や隅っこの席が落ち着くのでドアに近い席でよく仕事をしています。窓に近いため、視線を向けると眺望がよく、季節の移り変わりを感じられたり、緑が見えて気分転換にもなります。本社ビルや他のオフィスはブラインドをおろしていることが多いのですが、このオフィスはほとんどブラインドをあげて過ごしています。固定席ではないので、デスクの上に資料を置きっぱなしということがなく、ブラインドをあげていても、周囲の目を気にすることがなく、新宿高層階ならではの開放感を満喫できています。

――新オフィスになってから感じた変化やリモートツールの導入によるメリットを教えていただけますか?

遠藤:3つの技術部門が同じオフィスに統合されたことで、部門間の連携が密接になった点は大きな効果だと考えます。以前よりも、スピード感をもって情報交換、確認ができるようになりました。社内ではほとんどメールを使用しなくなり、Teamsのチャットでのやりとりが主流になりました。同じオフィスに全員が出社していた時よりも、現在の方がオンライン会議やチャットで細目に連絡をとるので、コミュニケーション量が増えたのではないかと感じています。

オンライン会議が当たり前になったことで、会議招集も前後の移動時間を考えずに開催できる・招集されるようになり、生産性が高まりました。会議室難民になることもなくなりましたね。

オンライン会議に利用できるブースを多く配置

欄間は開いていても隣の声がオンライン会議の邪魔にならないようサウンドマスキングを完備

 

遠藤:人事・採用面では、内定式などもオンラインで行ったようです。これまでの式だと代表者1名が挨拶するケースが主流でしたが、オンラインだと、全員に質問して全員がチャットで回答したり、各自が1分間でプレゼンするなど、リモートツールの導入によってコミュニケーションの取り方が多様化してきています。また、コールセンターの全国のオペレーター採用は、ZoomやSkypeを使って面接したり、入社前の研修で行うタイピングテストをリモートで行ったりしていると聞いています。

――今後の働き方やオフィスの在り方についてどのように思われますか?

遠藤:世の中の動きに合わせて流動していくと思いますが、今の働き方が当たり前になると思っています。オンラインやデジタルで解決しにくい対面だからこそ成果がでる業務は、付加価値の高いことになるでしょう。今後も、業務の目的によって一番良い働き方をチョイスしていくことになると思います。会社としては、働き方の多様化と、ニーズ、社会課題など、様々な要素に合わせて必要な快適性や機能を今後も取り入れていきたいと思います。

――この度は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 

編集後記

長時間パソコンに向かうことが多い技術部門のオフィスだからこそ、生産性・効率性を高める工夫、体に優しい工夫が随所に施されていました。目的に応じて最適なワークスペースを選択するスタイルがニューノーマルになり、自宅とオフィスの2択だけではなく、オフィス内でも複数のワークスペースを選べることでさらに出社時の楽しみが増幅するのだと思います。

インタビュー・編集:服部 撮影:平井