アイディアが生まれる場所に ――Faber Innovation Hubに込めた想い

株式会社Faber Company 代表取締役 古澤様

NEW Inc. 代表取締役 倉内様

オフィスナビ株式会社 服部

 

<<主力事業内容について>>

服部:御社の事業内容について教えていただけますか?   

古澤様(以下敬称略):私たちは、SEO・コンテンツマーケティング・オウンドメディアを支援する「ミエルカ」というプラットフォームを開発し、提供しています。「ミエルカ」をご利用いただく企業様は、ツールと、私たちが14年間培ってきたSEOやコンテンツマーケティングのノウハウを学習コンテンツとして利用することができます。弊社にはセミナー講師をする社員が多数いるので、それらを撮影したビデオアーカイブとPDFで、ユーザー様がテーマごとに沿った学習をすることが可能です。またカスタマーサクセスというサポートチームがあり、ユーザー様に個別のアドバイスを行っています。

服部:他のSEO対策やコンテンツマーケティングのコンサルティング会社との違いは何でしょうか?

古澤:有名な企業に依頼すると月額50万円くらい、そこまで有名ではなくとも実力がある企業に依頼すると、それでも月額20万くらいのコンサルティング費用がかかりますが、私たちのサービスは月額5~10万くらいで利用が可能です。コンサルティング会社のように、行動を指示する仕様書をつくったりはしませんが、その代わりにツールと学習コンテンツとサポートでまかなうので、お客様にも自分で手を動かしていただきながらお安くご利用いただいています。実態としては、その会社の社員の方が自分たちでSEOやコンテンツマーケティングやオウンドメディアの成果の上がるやり方を培っていくための内製化を支援するサービスだと捉えていただいているお客様が多いです。

服部:外部に委託するよりも安価で、ご利用企業の社員様が学習しながらレベルアップしていくのでノウハウも残っていくところに特徴があるのですね。

 

<<オフィス経歴ついて>>

服部:現在赤坂に本社を構えておられますが、ここに至るまでのオフィスについて教えていただけますか?

古澤:14年前に千葉の自宅アパートの1室で創業しました。一緒に働いてくれるWebデザイナーを採用するために、2006年に、東京の南青山のマンションタイプのオフィスに移転しました。Webデザイナーが反応するエリアといえば当時の私の知識では、南青山か代官山だと思ったのです。採用は思ったほど簡単ではなく、求職者はなかなか場所だけでは選ばないのだなと感じましたが、社員が5~6名まで増えて2009年に赤坂のオフィスビルに移転しました。札幌出身の私にとって、東京の赤坂はおしゃれで、私の世代にとっては憧れの街でした。それぞれの街には色がありますが、赤坂は、エリートサラリーマンもいれば政治家も外国人もいて、混沌としているところも気に入りました。その後は、現在の森崎ビルの4Fに移転して、5F、3F、1Fと増床し現在に至ります。

<<Faber Innovation Hub開設の経緯>>

服部:2018年12月に「Faber Innovation Hub」と冠したスペースを1Fに開設された経緯について教えていただけますか?

古澤:今まで私は、オフィスに造作やデザインを施したことがなく、弊社は引渡時のままの状態に、デスクや椅子をいれただけで業務を行っていました。私たちの仕事はB to Bですし、アパレルの店舗などのように家賃が売上を生む業態ではないので、会社が小さい規模の時はできるだけ賃料も内装も安く抑え、意味のないところに費用はかけないでおこうという考えでした。ただ、最近徐々に社員が増え、事業も波にのってきて、様々なオフィスに訪問したり、アメリカ人とビジネスの話をしたりすると、経営とデザインや、プロダクトとデザインはいつもセットで語られることが多いことに気づきました。新しいWebサービスにおいても使いやすさやデザインの優位性の話がよく話題にされ、いままでデザインというものを一切無視してきましたが、意味があることなのだろうということを感じるようになりました。

服部:それで「We Work」を利用されることになったのですね。

※WeWork・・・2018年に日本に進出した話題のコワーキングオフィス。世界中の入居メンバーとの共創的なコミュニティが特徴。

古澤:はい、まずは働く環境とデザインの関係を確かめてみようと思いました。徒歩圏内のアークヒルズの「WeWork」を半年ほど利用してみて分かったのは、何かを発想するには、リラックスできるスペースや雰囲気、視覚にはいってくる物や情報が役立つということです。WeWorkでは外国人の方もたくさん働いているのですが、彼らは18時を過ぎると仕事をぱたっとやめ、ビール片手にみんなで立ち話を始めるのです。執務室とは別にコミュニケーションが醸成されるような広いスペースが確保されており、混みいった話になるとソファーに座って話すこともできますし、毎晩のようにイベントも開催されています。最初はそれをみて日本人には違う感性だなと驚きましたが、その空間に慣れてくると悪くないんですよ。そこから何か繋がりやビジネスが生まれる可能性もあるだろうし、環境が人の発想を豊かにし、対話・会話を生むということを、実感できました。それで、森崎ビルの1Fを増床するタイミングで、せっかくだから、今までの私たちにない流れをつくってみようということでこの「Faber Innovation Hub」というスペースを社内に作ってみることにしました。

服部:どのような用途でご利用されていますか?

古澤:2018年12月27日にオープンしたばかりですが、新しい事業をつくっている社内のメンバーが主に利用しています。上のフロアにも自分の席はあるのですが、1Fで仕事をしたいときは自由に出入りが可能です。上のフロアでセミナーをよく開催しているので、その懇親会やイベントで使うことも多いです。スチール机が並んでいる空間とは違って、ソファーでくつろいでいると話したくなったり、少し眠ったり、読書してもいいような自由な感じがありますよね。オープンして間もないのでまだ効果を証明できているわけではありませんが、この自由な空間が、何かを生み出すきっかけになるのではないかという期待値はありますね。

 

<<Faber Innovation Hubのデザインについて>>

服部:今回この空間をデザインされた倉内様との出会いやご依頼の経緯について教えていただけますか?

古澤:2010年頃、私の友人の飲食店の周年記念のポスターにとても惹きこまれ、誰がデザインしたのか気になって倉内くんを紹介してもらいました。それから札幌で一緒に飲んだりする仲になり、2014年に会社のホームページを一新する際にデザインを依頼しました。ミエルカのネコのロゴマークや採用ページも倉内くんがデザインしてくれています。

倉内様(以下敬称略):最初は、古澤さんとはWEBデザインのお仕事からのお付き合いでしたが、今回、このオフィスのお話をきいて「ぜひやらせてください!」と手を挙げました。

服部:どのようなオフィスを作りたいと古澤様は倉内様にご要望をされましたか?

古澤:1Fを借り増しするにあたって新しい試みをしたいということと、森崎ビル1Fに“シリコンバレー”を作ってくれと伝えました(笑)。“混沌と対話”が生まれる場所にしてほしいとも依頼しましたね。

倉内:コミュニケーションが自然に生まれる空間づくりをこころがけました。スチール机が並ぶオフィスだときちんと話さなければならないと思って出てこないような話が、このような場所だとざっくばらんに話せます。ナチュラルに話せる距離感や、目線の高さ、照明などを意識してデザインしました。

服部:この空間についてご説明をお願いできますか?

倉内:あちらのデスクは、片側はきちんと作業ができるようにワークチェアで、もう片側はカフェのように出たり入ったりしやすく、リラックスできる椅子を選んでいます。この場所はメインゾーンとして靴を脱いでくつろげるようにしており、ローソファーで本を読んだり資料を広げたりできるようにしています。

あちらは、打ち合わせに使ったり、来客時に座っていただくスペース、その横にはスタンディングテーブルがあり、思い立った時にすぐ打ち合わせや話ができる高さになっています。

   

奥にはカフェのようなカウンターがあり、ドリンクを飲みながら隣同士や対面で話ができるようになっています。

古澤:今までの人生を振り返ると、アイディアが生まれる時って、必ず誰かとの対話がありました。何かを1人で考えて1人で作れたということはなく、仲間と対話を重ねていく中で、考えがまとまっていったり、自分にはないジャブを打ち込まれて、こういう考えがあったかと気づいて発展したりしたので、対話があって初めてイノベーションが生まれることに44歳になって初めて気付きました。

服部:働かれていく中で、オフィスに対する概念も変化されていったのですね。

古澤:そうですね。

倉内:一般的なオフィスだと、誰かが打ち合わせしていたり集中していると話しかけづ来こともあると思いますが、この空間は1人で集中もできるし、話しかけられても嫌ではない、そういうシームレスな空間っていいと思います。

 

<<オフィスとデザイン>>

古澤:倉内くんの札幌のオフィスも見学させてもらったのですがとてもいいんですよ。外から見たらカフェで、その奥がオフィスになっているんです。私にとっては当時とても斬新でした。

倉内:社内の打ち合わせスペースとカフェスペースを併設しています。もちろんカフェとして一般のお客様にコーヒーなども提供しています。仕事の打ち合わせをカフェ内で行うので、初めて来る方もざっくばらんに話してくれますし、距離感もとても近づきます。お客様と壁のある状態だとクリエイティブは発揮できないと思っているので、開放的になる空間はお客様と距離感を縮めることに役立っています。この空間を見て頂いて、古澤さんにも「いいね!こういうのがやりたいんだ。」と言っていただきましたね。

古澤:そうそう!

倉内:デザインは少し前まで、ただ飾るだけのものというイメージだけでなかなかお金をかけてもらえない部分だったのですが、最近は、新しいプロダクトを開発するから最初のブレストから入ってくれとか、経営者の方の中で優先順位が高くなってきていますね。なので、古澤さんからお声掛けいただけた時はとても嬉しかったです。

 

<<今後の展開について>>

服部:今後、この場所をどのように活用していきたいですか?

古澤:まだ模索中なので、ルールを決めずに入り込んできたことは受け入れてみようと思っています。社員やお客様がこういう使い方をしたいと言えば、一度やってみて、そこから何が起きるか感じてみたいですよね。

 

服部:最後に今後の事業の展望についてお聞かせください。

古澤:デジタルマーケティングの領域の中で、まだ誰も気づいていないけれどこういうものがあったら役に立つよねというサービスやツールを作り続けていきたいですね。人の真似をするのは面白くないので、この場所にいる間は社員の思い込みやリミッターを外してあげて大胆に発想してもらい、新しいものを作るためには何をしなければならないのかを導いていきたいと思います。

服部:今回はお話をお聞かせいただきありがとうございました。

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インタビュー:服部 撮影:平井