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オフィス移転企業インタビュー オフィス移転の目的やその効果を企業経営者に徹底取材!

取締役 島田 隆浩 様

セルジェンテック株式会社

取締役 島田 隆浩

  • コストを抑えて新オフィスを開設 セットアップオフィスという選択
  • 企業URL http://www.cellgentech.com/
  • 移転先 水道橋サウスビル
  • 住所東京都千代田区西神田2-7-9
  • 移転時期2018年9月
  • 新拠点開設規模約25坪

2018年9月、水道橋駅が最寄りの千代田区西神田に東京オフィスを開設されたセルジェンテック株式会社様(本社:千葉県千葉市)は、千葉大医学部との産学共同バイオベンチャー企業として、いままで治療法のなかった酵素や蛋白の欠損を原因とする病気を治すための遺伝子治療用細胞医薬品の実用化に向けて研究をされています。
まだ有効な治療法が存在しない希少疾病への遺伝子治療技術を、難病で苦しむ患者様に早く広く提供することをミッションに掲げているセルジェンテック株式会社 取締役の島田様にお話をうかがいました。


― ◆御社が研究されている遺伝子治療用細胞医薬品とはどのようなものか教えていただけますか?

遺伝子は、体内で蛋白や酵素をつくる働きをしていて、健康食品などに含まれている成分の1つ1つは、ほとんどの人間が自動的に体内で過不足なくつくれるようになっています。
ただ、うまれながらの遺伝子の欠損により特定の蛋白や酵素をつくることができない人が一部いるのです。
例えば怪我をしたら血がとまらない、血友病ってきいたことありますか?あれは、受精卵の時から、血液を凝固する成分をつくる遺伝子がぬけおちてしまっているので、その細胞がいくら分裂しても血液を固める成分が作られず、出血したら止まらないという病気です。
そこで、血友病の患者さんの脂肪細胞を取り出し、血液を固める酵素を作り出す遺伝子を、もともとの細胞の二重らせん構造にもぐりこませて、再度体内に戻すことによって、血液を固める酵素が自然と体内で作り出され、血が止まるようになるのです。
また、LCAT欠損症という善玉コレステロールがつくれない病気を治療する細胞医薬品の開発も実現に近いところまできています。
要は、欠損している遺伝子を細胞にもぐりこませて体内に戻してあげることで、細胞が知らず知らずに新しい遺伝子を働かせて必要な蛋白をつくれるようになって、病気の治癒や病態の改善を行うというのが遺伝子治療用細胞医薬品です。弊社は、患者本人の脂肪細胞を材料として細胞医薬品を作る点に大きな特徴があります。
遺伝子治療というとiPS細胞が有名ですが、iPS細胞は、必要な遺伝子操作をすることで皮膚や臓器などの体の組織をつくれるようになり、人工的に作った組織を移植する外科手術が可能になる技術です。
私たちの技術は外科手術で病気をなおすのではなく、薬を飲む代わりに体内に薬の製造工場を設置するようなもので、移植した細胞は消化されないため、必要な成分を出し続けてくれるという点がiPS細胞とのコンセプトの違いです。

― ◆創業の経緯を教えていただけますか?

セルジェンテックの研究内容は、もともと千葉大学の前学長であり医学部教授であった(現・名誉教授)齋藤康先生が研究されていたネタだったのです。
弊社の代表である麻生は製薬会社のエーザイに勤めていたのですが、当時の担当として齋藤先生の研究室に出入りしていて、齋藤先生から「脂肪細胞に病気を治す遺伝子を組み込んで、体の中に戻したら病気が治る」という発案があり、おもしろそうなので自社で研究してみましょうということになり、2000年にエーザイから研究員を送り込んで千葉大学と共同で研究をしました。その当時は、遺伝子治療とか細胞治療というのは世の中で実用化されていない治療方法だったんですね。
研究をすすめていくうちに、糖尿病のマウスにインスリンを出す遺伝子を投与したら血糖値が下がるという見事な結果も出て、これは実際に病気が治るかもしれないという話になって特許もエーザイが出願しました。
それを実際に医薬品として開発をしていこうとすると、このような細胞を用いた医薬品の実用化への道筋は不透明な時代でしたが、麻生に話が持ち掛けられ、病気を治すための遺伝子を入れた脂肪細胞を用いる再生医療・遺伝子治療医薬品の開発をおこなうため、2003年にセルジェンテック株式会社が設立され、2004年6月にエーザイから出願特許に関わる実用化権利が独占的に許可され、千葉大学との共同研究がスタートしました。


― ◆島田さんがセルジェンテックへ入社されたのはどのようなきっかけですか?

2005年にセルジェンテックはベンチャーキャピタルから研究資金として1億円の調達をしようとしていました。
それまでは会社のメンバーは麻生と研究員が1~2名いる程度で、あとは千葉大の方々の力を得ながら研究をしていました。
1億円の調達をするにあたり、これから本格的にその資金を使って研究をするだけでなく、会社の管理もきちんとできる人を雇うことがベンチャーキャピタルから条件として出されました。私が以前勤めていた上場コンサルティングの会社が、以前麻生が働いていたアンジェスMG社の上場をサポートしていたのですが、2005年2月末に、私はその会社を退職したばかりだったので、その縁で弊社の管理業務を手伝うことになり、今に至ります。


― ◆私(服部)がはじめて島田さんにお会いした時は神田小川町にオフィスがあって、その後、千葉本社にご移転をされましたよね。

当社は千葉大学発ベンチャー企業の認定を受けていて、千葉を拠点に研究活動を行っていますが、ライセンス活動など、他の製薬会社等と折衝するためには東京にオフィスがあったほうが有利です。
そのため、千葉にはラボをもちつつ、神田小川町のシンコーミュージックプラザに東京本社を構えていました。
2007年に千葉大学と経済産業省の共同プロジェクトで千葉大学発ベンチャーをそだてる目的のインキュベーション施設ができ、ラボ拡大のためにその第1号として入居をしました。
しばらくは東京に本社をおきつつ、千葉のラボで研究するという2拠点体制でやってきていたのですが、2008年にリーマンショックが起こったとき、開発資金の調達ができなくなりました。
それまでに11億円くらいの資金を集めて開発をしていましたが、これから実用化に向けてまだ何億円もお金がかかるという中で、東京オフィスは一旦撤退し、全て千葉に集約しようという決断をしました。
2010年に千葉に本社を移転し、30人くらい雇っていた研究員の数も減らしつつも、千葉大学との共同研究契約は継続し、研究開発活動を続けてきました。


― ◆リーマンショックの影響は多大だったのですね。そして、今年2018年に東京再進出に至った経緯を教えていただけますか?

研究を続けて、ようやく2017年2月に、開発した遺伝子治療医薬品を患者さんに投与した実績ができたのです。2017年の年末から資金調達活動を開始し、今年の春から夏にかけて5億8,000万円の資金を集めました。
事業のステージもすすみ、開発資金もある程度確保できたので、もう一度、東京にオフィスを構え、製薬会社さんと密接にコンタクトができる体制を整えましょうということになりました。
また、これから株式上場を目指して準備していく中で、経営管理業務を所管する部署も東京にあるほうが便利ということもあり、東京のオフィスを探そうということになりオフィスナビさんへご連絡をしました。


― ◆今回東京オフィス開設にあたり、一番重視されたことは何ですか?

千葉のラボへのアクセスのよさと、製薬会社さんが集まっている日本橋周辺へのアクセスのよさを重視していました。
総武線沿線が千葉駅にアクセスがよいので、御茶ノ水・水道橋・錦糸町とか、日本橋周辺とかを候補のエリアに考えていました。
また新しい東京オフィスに通う社員も具体的に想定されていたので、彼ら彼女らが働きやすい場所を考慮しました。

JR水道橋駅の北側には東京ドームシティが広がります。

東京歯科大学をはじめ、水道橋駅周辺には大学や専門学校が集積しています。

水道橋駅至近の三崎稲荷神社。


― ◆千葉本社と東京オフィスではそれぞれどのような業務をされていますか。

研究員は全員千葉に残ったまま、10数名体制で研究をつづけています。
東京には、管理部(総務・経理・財務)のメンバーと事業開発といって製薬会社さんとの折衝をするメンバー、監査役などの役員陣ふくめて全部で9名が在籍しています。

今回新オフィスを開設された水道橋サウスビル。

2018年にリニューアルされたエントランス。


― ◆いくつかご内見いただいて水道橋サウスに申込されましたが、どの点がよかったですか?

営業担当の倉持さんに紹介してもらった物件は50件くらいありましたが、日本橋で2物件、御茶ノ水で1件、神保町で1件と水道橋サウスを内見しました。

5Fエレベーターホール 待合用のソファーも入居前から設置されていました。

広さはどれも似ていてニーズに合致していたのですが、水道橋サウスにきめた大きな理由は2つあって、1つはアクセスのよさ、もう1つはあらかじめ受付や会議室ができていたセットアップオフィスでしたので内装をしなくてすみ、イメージもわきやすかったからです。
がらんとした何もない区画だと、どこに会議室をつくってどこに人を座らせるかイメージがつきにくい部分があるのですが、内見した時にここはすでにエントランスと会議室の造作がつくられていたので、残りの区画で10人くらいデスクがおけることが代表の麻生も明確にイメージできたようです。

入居時にセットアップされていた会議室。

― ◆ご移転にかかった内装費用は予定されていたものと比べていかがでしたか?

コストは全然かからなかったですね。内装をしなくてすんだので、什器備品を購入して、会議室と執務室のガラス間仕切りにブラインドをつけて、電話とLAN工事をしたくらいで済みました

白を基調とした什器・備品で統一されました。

― ◆今回東京に新オフィスを開設されてよかった変化はありますか?

勤務する社員の反応がとてもよかったですね。
そして、東京の会社で働いている方からすると千葉県でも市川や浦安は比較的近いのですが、千葉大学がある千葉駅は遠いのであまりイメージがよくなくて、ちょっと話をしたいと思っても行く覚悟が必要というか(笑)。なので、東京にオフィスができて、便利ですねとお客様皆様おっしゃいます。
また、今回管理部のメンバーを雇う時に、もともとセルジェンテックで働いていて子育てで一旦職をはなれていた女性メンバーに声をかけたのですが、「千葉には行けませんが、東京でアクセスのよい場所ならぜひまた一緒に働かせていただきたい。」と言われました。
無事東京にオフィスが決まって、彼女にも職場に戻ってきてもらえてよかったです。

― ◆御社の今後の展望をお聞かせいただけますか?

まだ人に遺伝子治療医薬品を投与した実績は1件だけですが、今後は医薬品開発に必要な治験という手続きでその数を増やしていって、成果がでれば他の製薬会社さんがうちと手を組みたいといってくれています。ライセンス収入が安定的にはいってくる経営基盤ができれば上場が実現すると思うので、タイミングを見て早期の上場実現を目指したいと思います。
この新拠点をベースにして、製薬会社さんとのビジネスの話を着実にすすめていって、それがいくつか成功すれば、必然的に人も増えていって、増床や移転の話になるかもしれませんね。
うちのビジネスって医薬品を作っていく過程で、細胞調整工場をどこかに設けないといけないんですよ。
当社が使う細胞は、患者さんの体から脂肪組織を取り出して、純度を高めた脂肪細胞に仕立て上げて遺伝子を組み込むのですが、それだけだと数が少ないので、病気を治すためには細胞を増やす必要があるのです。無菌状態で細胞を培養できる場所、遺伝子導入技術を用いるのでそれが外部環境に悪影響をあたえないよう厳しい基準をクリアしたクリーンルームを工場として設ける必要がいずれはでてくるので、その細胞調整工場の場所も考慮して、今後はオフィスの位置づけを考えていく必要がありそうです。

セルジェンテック島田様(左)とオフィスナビ服部(右)。



◆担当営業(倉持)より


この度はご移転のサポートをお任せ頂き、誠にありがとうございました。
弊社服部とのご縁でオフィスナビにご移転をお任せ頂け、大変嬉しく感じました。
今回のご要望が社員の方の交通便と取引先との利便性を考慮し、エリア重視でございましたが、 初期費用の削減と綺麗なレイアウトが事前に出来ておりイメージがしやすいという理由で セットアップオフィスをご紹介させて頂きました。
結果としてご満足頂けて非常に嬉しく思います。
また、麻生様、島田様の素敵な人柄がオフィス探しの際にも表れており、 オフィスを検討される際にも社員の方々への思いやりや配慮が多くございました。今後も益々のご発展を心より願っております。


◆編集後記

島田さんとは私がオフィスナビに入社する前からのお付き合いですが、こうしてお声掛けいただけてとても嬉しかったです。
今後、様々な難病治療に応用できそうな夢のある研究のお話をお聞かせいただき、とてもわくわくしました。長年の研究が実を結び、細胞治療医薬品が実用化されていくことを心から楽しみにしています。

営業担当:倉持
インタビュー:服部
写真撮影:平井

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